研究課題/領域番号 |
15K10342
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
小林 啓一 杏林大学, 医学部, 助教 (70406990)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 神経膠腫 / メチル化 / パイロシーケンス / MGMT / 幹細胞 |
研究実績の概要 |
悪性神経膠腫の新規メチル化マーカーを確立するため、パイロシークエンス法を用いて神経膠腫腫瘍検体、脳腫瘍幹細胞のDNAメチル化についての解析を行った。166例の悪性神経膠腫検体において、MGMTメチル化をパイロシークエンス法にて詳細に解析した。30例において、腫瘍内の性質の異なる部位のサンプルを複数(2~5か所)解析して、腫瘍内のheterogeneityを評価した。MSP法とパイロシークエンス法との高い相関が認められるが、パイロシークエンス法のcutoffなどを工夫することで最も高い相関が得られる条件を検証した。また、予後や化学療法反応性に関して、MSP法よりもパイロシークエンス法の方が正確に予測できることがあり、予後予測のための最適な条件についても検証した。テモゾロミド治療を行った前後の初発/再発腫瘍検体の解析により、治療に伴う腫瘍の分子機構の変化について検討をしたところ、テモゾロミド治療に伴いMGMTのメチル化が増加していく傾向にあり、さらにMGMTのメチル化がテモゾロミド治療後の遺伝子変異蓄積および悪性転化に関与することが示唆された。 膠芽腫由来腫瘍幹細胞を今年度新たに10例樹立して、これまで樹立した20例と合わせて30例程度において幹細胞のメチル化プロファイルについて解析していくことができる。また、血清中腫瘍由来DNAのメチル化解析を行うため、悪性神経膠腫を中心に96例の血清を蓄積して腫瘍由来のDNAの抽出を行っている。まずはMGMTメチル化からパイロシークエンス法にて解析して、腫瘍検体の結果との比較を行う。 網羅的メチル化解析データから新規メチル化マーカーとなりうる遺伝子、CpGサイトをいくつか選出してプライマーを設計し、条件設定を行った。今後、多数の神経膠腫腫瘍検体および脳腫瘍幹細胞、血清中腫瘍由来DNAを用いてマーカーとしての有用性について検証していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
近年、神経膠腫のテモゾロミド治療後の再発検体における分子プロファイルの変化、特にhypermutator phenotypeについての報告が相次ぎ(Wang et al, Nature Genetics2016, Kim et al, Cancer Cell2016, Johnson et al, Science2014)、MGMTメチル化との関連に注目が集まっている。自験例においても、テモゾロミド治療前後の神経膠腫検体を中心にメチル化の変化と予後との相関、遺伝子変異蓄積との相関についての解析を先行して行い、一定の結果が得られた。 本研究では、神経膠腫の予後や化学療法感受性を予測する新規メチル化マーカーの確立を目指しているが、新規メチル化マーカーに関しては選出と条件設定の段階であり、多数の腫瘍検体や幹細胞、血清中腫瘍由来DNAにおける検証がこれからという段階である。 以上より、現在までの達成度としてはやや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
Infinium450Kのデータを用いて、新規メチル化マーカーとなりうる遺伝子、CpGサイトをいくつか選出してプライマーを設計して条件設定を行った。今後、腫瘍検体および膠芽腫由来腫瘍幹細胞を用いて、新規メチル化マーカーについてパイロシークエンス法によるメチル化解析を行う。また、予後や化学療法感受性との相関を評価して有用なマーカーを確立する。腫瘍検体と幹細胞の比較も行い、治療耐性や予後と幹細胞との関連を探る。 血清中腫瘍由来circulating DNAのメチル化解析を行うため、悪性神経膠腫を中心に96例の血清を蓄積して腫瘍由来のDNAの抽出を行っている。まずは既知のMGMTメチル化からパイロシークエンス法にて解析して、腫瘍検体の結果との比較を行う。続いて、新規メチル化マーカーに関しても血清DNAを用いて解析してliquid biopsyとしての確立も目指す。 さらに、神経膠腫細胞株や腫瘍幹細胞を用いて、治療ターゲットとなりうる遺伝子の機能解析を行う。脱メチル化剤を用いて遺伝子の発現変化やテモゾロミドの治療効果の変化をin vivoおよびin vitroで検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新規メチル化マーカー確立のため、多数の腫瘍検体、膠芽腫由来腫瘍幹細胞、腫瘍由来血液中circulating DNAを用いてパイロシークエンスを行う予定であったが、今年度はまだ条件設定までしか行えなかったため使用額が予定額を下回り、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
多数の臨床検体材料を用いたパイロシークエンス解析を行うための実験試薬、プラスチック器具や細胞培養試薬購入のための費用などに用いる。
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