研究課題
パイロシークエンスを用いて神経膠腫腫瘍検体および脳腫瘍幹細胞のメチル化解析を行い、新規メチル化マーカーの検索を行った。メチル化マーカーの候補として、Infinium450Kのゲノムワイドメチル化解析のデータから神経膠腫の悪性転化に関わると考えられるIGFBP2に注目して、この遺伝子のメチル化についても解析を行った。既知の予後予測因子であるMGMTメチル化については300例以上でメチル化解析を行い、条件検討を行い最適なcutoffについて検証したところ、各グレードの神経膠腫においてパイロシークエンス法がMSP(methylation specific PCR)法よりも正確に予後予測ができることを確認した。IGFBP2のメチル化は、211例の神経膠腫腫瘍検体および21例の脳腫瘍幹細胞で解析を行ったところ、神経膠腫のグレードが上がるにつれてIGFBP2のメチル化が有意に低下し、さらに幹細胞ではグレード4の膠芽腫よりも低メチル化であった。この所見はMGMTなど他の遺伝子では見られず、IGFBP2が悪性度を予測するマーカーとして有用であると考えられた。腫瘍検体と幹細胞のペアで解析しても、IGFBP2メチル化は幹細胞で有意に低下していたことから、この遺伝子が幹細胞の維持や形成に関与することが示唆された。神経膠腫の生存期間、無増悪生存期間に関しては、最適なメチル化cutoffを設定することによりメチル化群の方が有意に予後良好であることが確認された。また、MGMTメチル化と組み合わせて予後解析すると、予後良好なMGMTメチル化群の中でもIGFBP2のメチル化が予後予測因子であった。本研究により、グリオーマの悪性度および予後を予測する神経メチル化マーカーを発見することができて、さらに幹細胞に特に重要な分子であることが示唆されたことから、治療標的としても有望と考えられた。
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