研究課題/領域番号 |
15K10343
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
佐々木 光 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70245512)
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研究分担者 |
廣瀬 雄一 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (60218849)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 1p19q / neoadjuvant chemotherapy / MGMT / 神経膠腫 / 画像 |
研究実績の概要 |
プロジェクト1)共同研究機関との共同研究で、Grade 2, 3神経膠腫がIDH 変異とp53変異に基づく、予後と相関する3群に分類されること、またp53変異と相関する染色体異常についての報告を行った(PLoS One)。 プロジェクト2)初回術後、1p19q共欠失あるいはMGMTプロモーターメチル化により化学療法反応性が予測された症例に対しては、術後に化学療法を先行し、不完全摘出例では腫瘍縮小後のsecond-look resectionの方針を継続した。同方針で治療が行われた26例をまとめ、prospectiveにneoadjuvant chemotherayの方針で治療が行われた神経膠腫のシリーズとして世界初の論文報告を行った(J Neurooncol)。 プロジェクト3)画像所見に基づく計画的neoadjuvant chemotherapyが2例で行われた。 プロジェクト4)初発のgrade 2, 3神経膠腫を対象として、画像所見と分子異常との相関を検討し、5つの所見の有無に基づく1p19qスコアシステムを確立した。論文準備中である。 プロジェクト5)化学療法による腫瘍縮小後のsecond-look 摘出標本では、初回標本に比べて泡沫細胞数が有意に増加し、MIB-1値が有意に減少することを確認し、学会報告(第33回日本脳腫瘍病理学会)を行った。 プロジェクト7)初発の1p19q codeleted神経膠腫を対象として解析を行い、摘出率、腫瘍径、病理診断など従来の予後因子は生存期間と相関がなく、組織学的gradeと19p gainが予後と相関することが示された。同論文は投稿中であるが、1p19q共欠失をもつ星細胞系神経膠腫の分子生物学的および臨床面での特徴に関しては論文発表を行った(Oncotarget)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロジェクト1)神経膠腫における分子生物学的分類と個別化治療の確立、2)化学療法反応性神経膠腫に対するneoadjuvant chemotherapyの有用性検証、3)画像所見に基づく術前分子診断による計画的neoadjuvant chemotherapyの有用性検証、4)1p19q共欠失やIDH変異を予測する画像所見の再確認、5)化学療法による腫瘍縮小後のsecond-look resection摘出標本における組織学的検索、6)化学療法による腫瘍縮小後の摘出標本における遺伝子変異の検討、7)1p19q共欠失をもつ神経膠腫における予後因子の検討、8)低悪性度神経膠腫における予後因子の検討: 研究目的にあげた上記8プロジェクトのうち、1)2)7)において論文publicationを行うことがきた。3)4)5)8)においても、研究実績の概要に記載したように、学会報告を行ったりあるいは論文準備中であり、概ね順調に進んでいる。6)は5)終了後に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1)PLoS One論文に続く論文を投稿中である。また、共同研究機関と協力して島回神経膠腫の分子生物学的および臨床面での特徴につき解析を行っている。 2)昨年度J Neurooncolで発表した内容に加えて、さらに症例数を増加、follow-up期間を延長して、neoadjuvant chemotherapyの有用性について積極的に学会報告を行う。 3)画像所見に基づく術前分子診断による計画的neoadjuvant chemotherapyの有用性検証:proof of conceptの探索的第2相臨床試験を行う。 4)1p19q共欠失やIDH変異を予測する画像所見の再確認:研究実績の概要の項で述べた1p19qスコアシステムについて論文投稿を行う。 5)化学療法による腫瘍縮小後secondlookresection摘出標本における組織学的検索:Second-look摘出標本において、泡沫細胞数およびMIB-1値の変化、さらにnestin (a marker of glioma stem-like cell) 陽性細胞数の変化について論文報告を行う。 6)化学療法による腫瘍縮小後摘出標本における遺伝子変異の検討:5)終了後に行う予定。 7)1p19q共欠失をもつ神経膠腫の予後因子の検討:論文投稿中。 8)低悪性度神経膠腫における予後因子の検討:当院で摘出術が施行された約180例の低悪性度神経膠腫において、分子生物学的解析を進めている。特にIDH変異がありながら予後不良であった症例に着目し、解析を行う。今年度中の論文投稿を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は予定通りに進んでいるが、プロジェクト6)や8)など一部の研究においてはH28年度にまとめて施行予定であり、費用の一部をH28年度に回した。
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次年度使用額の使用計画 |
プロジェクト1)-5)、7)は予定通り進める。プロジェクト6)における遺伝子変異検索、およびプロジェクト8)における、IDH変異がありながら予後不良であった症例における詳細な解析をH28年度に予定している。
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