研究課題/領域番号 |
15K10347
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
奥田 武司 近畿大学, 医学部, 講師 (10340796)
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研究分担者 |
藤田 貢 近畿大学, 医学部, 准教授 (40609997)
中田 晋 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (80590695)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 免疫療法 / 肺がん / 脳転移 / M2マクロファージ |
研究実績の概要 |
近年、がんの増殖、浸潤、転移などにおける免疫系の関わりが明らかとなっており、特に微小転移巣における慢性炎症状態が腫瘍増殖に寄与することが判明している。現在、免疫療法はPD-1抗体の登場により従来の手術、放射線治療、化学療法に加えた新たな治療手段として確立しつつある領域であり、今後も多大な発展が期待されている。我々はこれまでに肺がんの脳転移組織内において、M2マクロファージが集積していることを発見した。M2マクロファージは免疫抑制系の機能を有しており、これまでの研究結果からこのM2マクロファージが脳転移を含めた遠隔転移に関わるものではないかと推測した。そこで、これらの腫瘍内マクロファージと末梢血マクロファージ由来のmRNAを用いた遺伝子解析によりM2マクロファージの腫瘍内における役割を検討し、さらに治療標的となりうる遺伝子群の同定を試みた。現在のところ、腫瘍内ではCCL2およびCXCL12ケモカインの発現亢進がみられ、同時に末梢血中においては該当受容体を発現するマクロファージを伴っていた。さらにこれら腫瘍内マクロファージ由来のmRNAを用いたDNAマイクロアレイ解析により、本細胞群は通常のマクロファージと比較して、共刺激分子であるCD276の発現低下をはじめとするユニークな表面抗原プロファイルを持っていることが明らかなとなった。以上の結果より、本細胞群が関わる一連のカスケードが転移性脳腫瘍発症及び増悪の寄与因子であることが示唆された。これらの結果をふまえて、転移性脳腫瘍マウス実験モデルを用いて本病態におけるM2マクロファージの病的意義を解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は手技ともに難易度が高く、当初の予想以上に時間を要している。特にマウス実験モデル作成において、肺がんの臨床像に即した、すなわち多発脳転移モデルの作成に苦慮していたが、がん細胞を経皮的左心室内注入することによって多発性脳転移モデルを作製可能であることを確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
転移性脳腫瘍マウス実験モデルを確立した後、RB6-8C5 抗体を用いて転移性脳腫瘍発症におけるM2 マクロファージ除去のインパクトを直接的に評価する。評価項目は、生存率、フローサイトメトリーによる脳腫瘍内および全身における免疫細胞分布の評価、腫瘍微小環境におけるケモカイン等各種慢性炎症関連分子の探索などを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究計画遂行が一部で難航したため、次年度へ繰越が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
最も難易度の高い研究を終了できたので、今後はこれまでの研究計画の遅延を挽回して予定通りに終了する。
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