研究課題/領域番号 |
15K10348
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
藤田 貢 近畿大学, 医学部, 准教授 (40609997)
|
研究分担者 |
義江 修 近畿大学, 医学部, 教授 (10166910)
中田 晋 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (80590695)
宮武 伸一 大阪医科大学, 医学部, 教授 (90209916)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | グリオーマ / 遅発性脳放射線壊死 / 慢性炎症 / M2 マクロファージ |
研究実績の概要 |
グリオーマに対する治療成績は高線量放射線治療の進歩により向上し、長期生存例が増加している。一方で遅発性脳放射線壊死を生じる症例も増加傾向にある。本病態は進行性の組織壊死と病変周囲に広範な脳浮腫を来たし、患者は種々の神経脱落症状を呈して QOL が低下し、ひいては患者生命をも脅かす。現在は抗 VEGF 抗体ベバシズマブによる治療が薬事承認されつつあるが、本治療終了後に壊死再発をきたす症例も多く、本病態のすべてが解明され制御されているとは言い切れない。近年の研究で我々は脳放射線壊死組織内では慢性炎症状態が生じていることが示されている。そこで本研究課題では、脳放射線壊死組織内における免疫応答の解析を試みた。その結果、平成 27 年度においてはヒト脳放射線壊死組織内では CXCL12 ケモカイン発現が上昇し、あわせて M2 マクロファージ浸潤の増加していることを見いだした。さらに本病態の臨床像に即したグリオーマ放射線脳壊死マウスモデルの作製に成功し、本病態における M2 マクロファージの影響をより詳細に解析するツールを確立しえた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成 27 年度には放射線脳壊死マウス実験モデル作製および手技改良を行った。小動物放射線治療装置ラジオフレックス 350 (を用いてマウス頭蓋に 60 Gy 以上の外照射を加えることで、60 日程度の経過でヒト症候性放射線脳壊死相当の病理所見をともなう脳実質内病変を安定して作製しえた。さらに放射線脳壊死マウス脳組織からはパーコールを用いた比重分離法により各種免疫細胞の分離が可能であることを明らかにした。これらの実験手法により、放射線脳壊死マウス脳内からも免疫細胞が単離でき、さらに病変微小環境内の M2マクロファージおよび各種免疫担当細胞を単離することができた。また摘出した組織から mRNA を抽出して定量的リアルタイム PCR を用い、放射線脳壊死マウス脳内でのケモカイン発現量を経時的に測定した。その結果、M2マクロファージおよび各種免疫細胞が壊死組織内集積に寄与するとされる CCL2 および CXCL12 ケモカインの発現上昇が明らかとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
平成 28 年度以降は、ケモカイン受容体遺伝子欠損マウスを用いた M2 マクロファージ関連ケモカインの影響の評価をする。すなわち、M2 マクロファージ壊死組織内集積にかかわるケモカイン同定する。さらに我々は CCR2 欠損マウスをはじめとして各種ケモカイン受容体遺伝欠損マウスを用い、グリオーマ放射線脳壊死モデルの作製を試みる。この実験により各種ケモカインの役割をより詳細に解析することが可能となる。また以前に我々は RB6-8C5 抗体を用いてマウス M2 マクロファージ除去実験に成功している。本研究課題でも同様にRB6-8C5 抗体を用い、グリオーマ放射線脳壊死におけるM2 マクロファージ除去のインパクトを評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平行して実施している類似研究からの支出により、インフラ整備については出費削減できたのが理由である。ただし平成 28 年度以降は (類似研究も含め) 本研究課題が主導的立場となるため、引き続き研究支援を要すると考えられる。
|
次年度使用額の使用計画 |
マウス用脳照射装置の改良に相当額を要する。また平成 27 年度に安定化させた脳内免疫細胞抽出技術を用い、平成 28 年度以降はフローサイトメトリー法による免疫細胞の詳細な解析を行う予定であり、そのためにフローサイトメトリー対応型の蛍光抗体を購入する。そちらにも相当額を要すると推測される。
|