研究課題
平成27年度は、症例と臨床情報の蓄積、および遺伝子解析に向けて CTOS 株の樹立を行った。本年度は対象症例が少なく、生検術後に neo-adjuvant として放射線治療・化学療法を施行した症例5例を蓄積した。生検術にて得られた組織、放射線化学療法後の開頭術で得られた組織それぞれから CTOS を作成した。幸い、全ての症例で治療前後の CTOS 株の樹立ができた。同時に、生検組織および摘出組織のペアでの凍結組織保存を行った。一方、既知の遺伝子解析として、1p/19q 共欠失・MGTメチル化・IDH1変異の解析を行った。1pは正常 1例、小欠失3例、全欠失1例で、19qは全例全欠失を認めた。MGMTは UnMet3例、Met2例で、IDH-1 は全例野生型であった。治療前後で MIB-1 index を比較すると、低下する症例と変化しない症例を認めた。治療前の腫瘍倍加時間は10.7日~49.3日。テモゾロミドのみで腫瘍縮小が得られた症例は1例のみで、残る3例は腫瘍倍加時間の延長を認めた。一方、テモゾロミドに IMRT を加えると、5例中4例で腫瘍縮小を認めた。以上より、本年度症例蓄積した症例5例は、化学療法著効例1例(MGMT-Met)、化学療法有効例3例(MGMT-UnMet)、化学療法無効例1例(MGMT-Met)に分類された。また、放射線化学療法としては、著効例1例、有効例3例、無効例1例に分類できた。MGMTメチル化は、化学療法著効例で Met であったが、無効例1例も Met であり、一方、UnMet3例はいずれもテモゾロミド有効例であり、MGMT メチル化のみでテモゾロミドの効果を予測するのは困難であることが示唆され、今回の研究の目的である新たな分子診断の重要性が再認識された。
3: やや遅れている
平成27年度は、期待していたよりも当院で治療した神経膠芽腫症例が少なく、これが症例蓄積が思うように進まなかった原因となった。引き続き症例蓄積に努めるが、平成28年度は網羅的遺伝子解析に関しては、症例蓄積と平行してこれを行っていく方針に変更する予定とした。また、既に治療を終了している症例においても、評価可能病変が残存していた症例を対象に、テモゾロミド単独効果および放射線化学療法の効果を定量し、対象症例に組み込むことで、遅れを回復させる方針とした。
本研究は、当初の予定通り推進していく方針である。幸い CTOS 株の樹立は高率に行えることも明らかと成っており、症例を蓄積すると同時並行して、次世代シーケンサーを用いた網羅的遺伝子変異解析および cDNA chip を用いた網羅的遺伝子発現解析を平成28年度に開始する。一方、CTOS に関しては、継代が可能か検証を行う必要もある。従来の予定に平行して、CTOS継代に関してもその至適方法の確立を行う。CTOSの継代が可能となった場合、CTOS を用いた薬物感受性試験を行い、CTOS を用いた薬物感受性試験が実際の臨床にも応用可能か検証を加える予定である。
平成27年度は、症例蓄積が予定より少なかったため、解析に使用する試薬代など物品費が予測よりも少なかった。網羅的遺伝子解析は一定数の症例蓄積を行った後に行う予定としていたが、今年度はその症例数に至らず解析を開始できなかったため、これに係わる物品費が使用されなかった。
平成28年度は、対象症例を再検討することで、症例蓄積を増加させる予定であり、遅れていた遺伝子解析を速度をあげて開始する予定である。従って、これにかかわる物品費が予定よりも増える見込みだが、これを平成27年度未使用繰り越し分を用いて解析を行うこととする。
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