研究課題/領域番号 |
15K10352
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
杉山 慎一郎 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (30623152)
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研究分担者 |
遠藤 俊毅 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (00535370)
新妻 邦泰 東北大学, 医学系研究科, 助教 (10643330)
船本 健一 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 准教授 (70451630)
坂田 洋之 東北大学, 医工学研究科, 助教 (80722305)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ドラッグ・デリバリー・デリバリー / 再生医療 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、convection-enhanced delivery (CED)法を用いた脊髄損傷に対する軸索再生治療方法の開発である。脊髄損傷の治療においては、損傷部位において断絶している軸索を、その末梢へと進展・誘導し、シナプス形成・ミエリン化を促進することが達成目標である。しかし、脊髄損傷部位は軸索再生に不利な環境にある。すなわち、炎症反応と、それに伴うグリア瘢痕の形成、また軸索損傷後のミエリン由来軸索再生阻害因子の存在であるが、実は、このような環境は、生体が障害に対する生来の修復機転を働かせている結果でもある。よって、脊髄損傷部位における軸索再生を達成するためには、①グリア瘢痕につながるような生来の修復機転をブロックし、②軸索再生につながる治癒機転を働かせる、という2つの治療戦略を同時に行う必要がある。そのための治療薬もまた、多数、提案されているが、従来の経静脈的薬剤投与法では、血液-脳脊髄関門の存在から、標的組織への薬剤送達が困難であった。近年、我々が開発を進めてきたCED法を用いれば、治療効果を発揮するのに十分な濃度で、一度に複数の治療薬を脊髄組織へと送達できる。CED法を用いた2つの治療戦略、(1)多剤薬剤カクテル投与による最大限の軸索再生(2)細胞外環境の最適化による幹細胞移植治療の効果促進について、概念実証を行う目的で、以下の動物実験を行った。まず、新規のラット脊髄損傷モデルを作成した。バルーンカテーテルを用い、圧挫損傷の程度を変更することで、重症度の異なるモデルを作成した。その評価には、下肢運動機能評価といった行動学的検査に加え、MRIを用いた非侵襲的な画像評価方法を開発した。従来、脊髄損傷の臨床において使用されているステロイドをCED法を用いて投与し、その有効性を確認した。また、幹細胞治療に用いるMuse細胞の調整法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規に開発した精髄損傷モデルを用いて研究を開始したが、新規の治療方法を開発する研究であるため、従来の脊髄損傷モデル、すなわちインパクターを用いた動物モデルについても、その有用性を確認する必要があると考えられたた。そのため、同様の実験を、従来のモデルで再検討することも行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本グループにおいては、神経系組織に対するMuse細胞を用いた幹細胞治療についても、積極的に研究を進めている。Muse細胞を、脊髄損傷部位において上位と下位の軸索をつなぐ介在ニューロンとするという全く新しい治療戦略についても検討中である。無論、CED法は、移植後の幹細胞の周囲環境を最適化するための有用な手段である。本研究成果は、他の幹細胞治療においても有用な治験となると考えられる。
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