研究課題/領域番号 |
15K10360
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松田 和郎 京都大学, 健康長寿社会の総合医療開発ユニット, 講師 (80444446)
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研究分担者 |
藤山 文乃 同志社大学, 脳科学研究科, 教授 (20244022)
薗村 貴弘 金沢医科大学, 医学部, 講師 (40347092)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 大脳基底核回路 / 黒質 / 腹側被蓋野 / 淡蒼球外節 / 線条体 / 視床下核 / ウイルスベクター / パーキンソン病 |
研究実績の概要 |
本研究では遺伝子組換えウイルスベクターを神経標識物質として応用し、大脳基底核を構成するニューロンを単一細胞(single cell)の解像度で可視化・再構成し、機能的入出力構造の定量的解析によってパーキンソン病における運動制御異常の神経基盤を明らかにすることを目的の一つとしている。今年度は大脳基底核の腹側被蓋野、黒質網様部および淡蒼球外節を標的としてウイルスベクターを注入し、各標的細胞の投射経路を解析した。化学的に同定された腹側被蓋野のドーパミン細胞からは側坐核、嗅結節、線条体、前頭皮質、側頭葉嗅内野などに豊富な軸索投射が観察されたが、すでに報告した黒質緻密部からの軸索投射量よりは少なく、パーキンソン病においてこの領域の変性脱落が少ない原因の一つと考えられた。黒質網様部からは主として視床への散在性かつ少ない軸索投射が観察された。一方、淡蒼球外節からの投射は一般的には主として視床下核に投射するとされるが、単一細胞レベルの観察では線条体により豊富な軸索投射をしていることが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウイルスベクターを用いた単一神経細胞の標識の手法についてはすでに確立されており、問題なく遂行された。ただし、本手法は希釈されたウイルス溶液がある程度の偶然性をもって適切な個数(1個から数個)の神経細胞に感染することに依存しているため、本質的に人為的な努力だけではデータの収集を制御しきれない面が存在する。現在のところ概ね当初の計画通りのデータを蓄積しているが、この進捗状況を維持するためにはより正確な手技に努め人的時間的努力を惜しまず研究を推進してゆきたい。
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今後の研究の推進方策 |
予定期間内に必要なサンプル数が得られない場合は手術数を追加し前半の実験期間を最大半年程度延長することで解決できる見込みである。その後、1.単一細胞の全長にわたる可視化・再構成(single cell解析) 2.樹状突起や軸索の距離・体積の定量的解析 3.破壊実験と行動解析による検証に基づいた機能的解析、を進めつつ、より効果的な手術標的の実験的探索を推進してゆきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度中に投稿予定であった論文作成が次年度の予定に変更になったので英文校閲のための謝金が必要でなくなったため。また、消耗品の購入費が予定額より少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
主として次年度論文作成の際の謝金として、一部を消耗品の購入費として使用する予定である。
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