研究課題/領域番号 |
15K10363
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
伊藤 眞一 島根大学, 医学部, 准教授 (10145295)
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研究分担者 |
河合 美菜子 島根大学, 医学部, 助教 (50710109)
濱 徳行 島根大学, 医学部, 助教 (60422010)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 皮質活動 / 視床刺激 / 迷走神経 / 内臓感覚 / 光学的記録 / 体性痛覚 / 視床中継核 |
研究実績の概要 |
本研究は、迷走神経刺激に対する大脳皮質の応答を広域多チャネル記録システムで記録するものである。当該皮質は側頭部に位置するため、もともと頭頂部用に開発された当教室の測定装置はそのままでは本研究に適用できず、ラット保定器具の改変が必要であった。その改変は昨年度までにほぼ終了し、本年度は、当該皮質での応答を検出することと、視床中継部位の検索とを行った。一方、当該皮質には迷走神経以外に身体表面の痛みの線維からの入力があることが示唆されており、迷走神経刺激と共に皮膚電気刺激を用いてこのことを検討した。 電気生理学の知見から皮質の2箇所で応答が発生することがわかっている。これを光学的方法で確認することから始めた。皮質の細胞構築地図との対応を記録中に知る手がかりとして体性感覚野舌領域を取り上げ、舌刺激に対する応答のある部位と迷走神経刺激に対する応答のある部位とを検索した。その結果は、舌刺激、迷走神経刺激に対する応答はともに体性感覚野顎顔面領域の広範囲で出現し、電気刺激に対する筋収縮で微小な振動が発生し、その振動によるアーチファクトが真の応答に重畳していると考えられた。その対策として非動化(人工呼吸が必要)を導入し、筋収縮を除去した上での記録を始めた。現在、各応答が安定して分離よく記録できる条件を検討しているところである。 視床においては皮質の二箇所にそれぞれ対応する二箇所で迷走神経・皮膚電気刺激に対する応答が得られた。様々な部位で様々な応答があるが、短潜時で広い受容野を持つ応答がこの二箇所に集中しており、中継核としての応答と見なされる。現在、その生理学的特性を検討すると同時に、視床体性感覚中継核の対部位再現との位置関係を詳しく調べている。これは、当該部位を視床の機能地図上に位置づけるとともに、可及的少ない回数の電極刺入で速やかに当該部位をヒットする上で重要な手がかりを与えるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までの、記録装置周辺の改良に時間が掛かったことの遅れを完全に取り返せていない。また、人工呼吸の導入が予定外で、これに対応するのに時間を要した。現在、軌道に乗りつつあるので、実験を重ねてデータを増やしていくことで最終年度内には充分な成果が得られると考える。
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今後の研究の推進方策 |
末梢刺激に対する皮質応答の光学的記録が確実にできるようにする。迷走神経刺激・皮膚刺激に対して応答する二つの領野を、舌の応答領野との位置対応に基づいて、皮質の感覚再現地図上に定位する。一方、視床の目指す核に素早く到達できるようにする。その上で、予定通り視床刺激に対する皮質応答を記録する。周辺の視床部位の刺激も行い、周辺領域も含めた、視床と皮質の機能的結合地図を画く
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次年度使用額が生じた理由 |
装置改良、実験方法の修正などで研究計画にやや遅れが生じ、予定していた実験数をこなすことができなかった。その結果、次年度使用額が発生すると共に、当初予定の3ヵ年では研究を完了することが困難に思われた。研究期間を一年延長することで、実験例を充分なものとし、初期の目標を達成できると考える。
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