研究課題/領域番号 |
15K10366
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
菅野 洋 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員准教授 (40244496)
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研究分担者 |
宮川 拓也 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (50596559)
田之倉 優 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (60136786)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多能性幹細胞 / 神経分化誘導 / BC-boxモチーフ / 神経再生 |
研究実績の概要 |
研究代表者らは、elongin BCをリガンドとするBCボックス蛋白群が神経幹細胞のみならずMUSE細胞を始めとする多能性間葉系幹細胞の神経分化制御に関わっており、elongin BCと結合するアミノ酸配列であるBCボックスモチーフ構造[(A,P,S,T)LXXX (A,C) XXX(A,I,L,V)]が、神経分化ドメインであることを突き止めた。BCボックスモチーフ構造は、哺乳類の細胞のみならず、ウイルスにも認められることから、生物進化の過程において保存された重要な構造であると考えられる。BCボックス蛋白群は、elongin BCと結合するモチーフ(BC box motif)を持つことからそう呼ばれるが、転写因子Stat3を制御するSOCS-box群は、elongin BCと結合してSBC複合体を形成するとStat3の発現を制御し多能性幹細胞を神経細胞へ分化誘導することが示唆されていた。平成27年度には、多能性間葉系幹細胞の細胞内へBC-boxモチーフペプチドを導入した際に様々な種類の神経細胞への分化が何故を引き起こされるのかを検討した。その結果、BC-boxモチーフペプチドを細胞内へ導入するとJAK/STAT系が抑制されることがWestern blottingの結果から明らかとなり、この反応はJAK2の発現をまず制御することから始めることが示唆された。次に、VHL由来のBC-boxモチーフペプチドを多能性間葉性幹細胞へ導入したときにBC-boxモチーフとの結合力に関して構造生物学的に解析すると、結合が強いほど神経分化活性が高いことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BC-boxモチーフペプチドによるMUSE細胞を含む多能性間葉系幹細胞の神経分化誘導は簡便でかつ効率が高いが、その神経分化誘導のメカニズムは十分には分かっていなかったが、平成27年度には構造生物学的解析によりBC-boxモチーフペプチドとBC-boxモチーフとの結合力に神経分化活性が依存することが明らかになった。このため、当該研究はおおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、BC-boxモチーフペプチドのうち、主にVHL由来BC-boxモチーフペプチドのみを用いたが今後は種々の他のBC-boxモチーフペプチドを用いてゆき、更に細胞も従来用いてきた皮膚由来間葉系幹細胞だけでなく、MUSE細胞を用いてゆく予定である。さらに可能であれば動物実験も進めてゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は分担研究者によるVHL由来BC-boxモチーフペプチドの神経分化誘導作用に関する構造生物学的研究を主に行い、その研究成果を待ちつつ、研究代表者は種々のBC-boxモチーフペプチドによる様々な種類のニューロンへの分化誘導を行ってきた。この結果を元にして次年度には真の多能性体性幹細胞であるMUSE細胞を分離して、この細胞を用いて研究するするために次年度の使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度には、真の多能性体性幹細胞であるMUSE細胞を分離培養し、この細胞を種々のBC-boxモチーフペプチドにより、様々な種類のニューロンへ分化誘導させ、これを解析し、また神経疾患動物に移植して、神経再生がなされるか検討する予定である。このためいくつかの少額の研究備品をはじめとして、必要な細胞や試薬等を購入する予定である。
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