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2015 年度 実施状況報告書

全エクソーム解析を用いた脳奇形疾患における体細胞変異の同定

研究課題

研究課題/領域番号 15K10367
研究機関横浜市立大学

研究代表者

中島 光子  横浜市立大学, 医学部, 助教 (20541965)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード全エクソーム解析 / TAS解析 / 体細胞変異 / MTOR
研究実績の概要

限局性皮質異形成(Focal cortical dysplasia, FCD)IIb患者9名のエクソーム解析を施行し、その結果MTOR遺伝子の体細胞変異を同定した。MTOR遺伝子がコードするmTOR蛋白は、脳皮質の発生において重要な役割を果たすPI3K-AKT3-mTOR経路の制御因子として知られており、これまでの研究により、FCDIIb組織においてはmTOR経路が活性化されることが報告されている。そこで、Targeted amplicon sequencing法にてMTOR遺伝子の全コーディング領域のdeep sequencingを行ったところ、FCDIIb患者13例中6例においてMTOR遺伝子の体細胞変異を同定した。
次に、MTOR変異を有する患者の脳組織検体におけるmTOR経路の活性化を評価したところ、MTOR変異陽性のFCDIIb症例においては、他の疾患の脳組織に比較してmTOR経路の著しい活性化が認められた。また、同定された各変異がmTOR経路に及ぼす影響をヒト培養細胞株を用いて検討したところ、MTOR変異体を発現するプラスミドをトランスフェクションした細胞株はMTOR正常体を発現するプラスミドをトランスフェクションした細胞株に比べて、mTOR経路の活性が著明に上昇していた。このことから、これらの変異はすべてPI3K-AKT3-mTOR経路を賦活化する活性型変異であることが示唆された。
mTOR蛋白は免疫抑制剤の一つであるラパマイシン(Rapamycin)の標的蛋白であり、ラパマイシンおよびそのラパログをFCDに起因する難治性てんかんの治療薬として応用できる可能性が期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

FCDの新規原因遺伝子MTORの同定に成功しており、さらに変異が疾患病態形成に寄与する機序の一部を解明することに成功している。また、ラパマイシンの投与がMTOR遺伝子変異によるmTOR経路の活性化を抑制することが示されていることから、現在難治性てんかんを示すFCD患者に対するラパマイシン投与の治験が進められている。以上の事から想定以上の進捗が得られていと考えられる。

今後の研究の推進方策

現在までに累計30例の皮質形成異常症患者の脳組織および血液検体の集積が修了しており、引き続き新規原因遺伝子の検索を行っていく。また、すでに同定された遺伝子に関しては、遺伝子変異が疾患病態に与える影響を検討する。

次年度使用額が生じた理由

平成28年度に使用予定である研究資料の費用として27年度分の研究費の一部を繰り越したため。

次年度使用額の使用計画

平成28年度に年間契約にて使用するHGMDデータベースの契約料(オンラインネームドユーザー使用料190,000円およびダウンロード研究用ラボライセンス料570,000円)の支払いや海外出張費等に使用する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Somatic mutations in MTOR cause focal cortical dysplasia.2015

    • 著者名/発表者名
      Nakashima M, Saitsu H, Takei N, Tohyama J, Kato M, Kitaura H, Shiina M, Shirozu H, Masuda H, Watanabe K, Ohba C, Tsurusaki Y, Miyake N, Zheng Y, Sato T, Takebayashi H, Ogata K, Kameyama S, Kakita A, Matsumoto N.
    • 雑誌名

      Ann Neurol

      巻: 78 ページ: 375-386

    • DOI

      10.1002/ana.24444.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] De novo DNM1 mutations in two cases of epileptic encephalopathy.2015

    • 著者名/発表者名
      Nakashima M, Kouga T, Lourenço CM, Shiina M, Goto T, Tsurusaki Y, Miyatake S, Miyake N, Saitsu H, Ogata K, Osaka H, Matsumoto N.
    • 雑誌名

      Epilepsia

      巻: Epub 2015 Nov 27. ページ: e18-23

    • DOI

      10.1111/epi.13257.

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 限局性皮質異形成(FCD)IIb型におけるMTOR体細胞変異の同定.2015

    • 著者名/発表者名
      中島光子
    • 学会等名
      日本人類遺伝学会第60回大会
    • 発表場所
      京王プラザホテル、新宿、東京
    • 年月日
      2015-10-14 – 2015-10-17
  • [学会発表] Somatic mutations in the MTOR gene cause focal cortical dysplasia Type IIb2015

    • 著者名/発表者名
      Mitsuko Nakashima
    • 学会等名
      merican Society of Human Genetics Annual Meeting 2015
    • 発表場所
      Baltimore, MD, USA
    • 年月日
      2015-10-06 – 2015-10-10
    • 国際学会

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公開日: 2017-01-06  

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