研究課題/領域番号 |
15K10371
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
丸山 啓介 杏林大学, 医学部, 助教 (10345192)
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研究分担者 |
橋本 直己 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (70345354)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プロジェクションマッピング / 脳神経外科手術 |
研究実績の概要 |
手術前にあらかじめ得られた画像をコンピュータディスプレー上ではなく直接頭皮上に投影するプロジェクションマッピングを行うべく、まず第1段階として、画像処理および投影の環境を整えた。MRI、CTのDICOM画像を画像処理ソフトウェアAmiraに取り込んだ。皮膚と脳、脳血管、腫瘍など目標となる構造物の3次元的画像をあらかじめ作成した。この結果を電気通信大学に持ち込み、プロジェクションマッピング専用のソフトウェアに読み込んだ。Kinect V2をセンサーとして頭皮及び顔面の形状を元に投影に際しての位置あわせ作業を行った。ここまでは前年までの先行研究ですでに構築したものをおおむね流用した。 第2段階として、投影画像を手術に持ち込むに当たって必要不可欠な、誤差検証作業を行った。3Dプリンタにて頭皮及び脳内の構造物を含有する3次元的なモデルを実物大で2体(4側)作成し出力した。脳の表面の構造物について、投影したものと3次元的モデルでの位置関係を比較し、その投影誤差を測定した。精度を確保するための特殊な工学的な処理を施すことにより精度の向上に努め、最終的には投影誤差は、平均2.2mm、標準偏差が1.1mmと、手術に適応しうる精度を得ることができ、かつこの精度には再現性についても確認された。 また、次年度以降にこの手法を脳手術に応用するための倫理委員会の申請を行い、審議を経た上で承認を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1段階の画像処理および投影の環境整備については、前年までの先行研究ですでに構築したものをおおむね流用したため、すぐに第2段階の作業に進むことができた。精度を向上させる特殊な工学的な処理を要するため、一定以上の期間を必要としたが、年度内に手術に適応しうる精度を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
手術に適応する前に、投影における頭髪の影響を確認する必要があるため、頭髪の存在する環境でも同様の精度が得られるかどうかの検証作業を行う。 同様の精度が確認できた後に、脳の表面の血管を描出するため、脳虚血に対する浅側頭動脈-中大脳動脈(STA-MCA)吻合術へ応用する。この手術は脳の表層に位置する中大脳動脈に血管吻合を行うもので、通常は回答を行った後に吻合の標的とする血管を探索することになるが、これをあらかじめ頭皮上に投影することにより、より安全に、より精度の高い手術を行うことを目指す。STA-MCA吻合術10例を目安としてこの手技を適応する。なお、このための臨床倫理審査の結果すでに承認されている。頭皮上に投影した血管の位置と、開頭して血管が露出した状態での血管の位置を比較し、その誤差を測定する。 ついで、1点からの投影では深部になるにしたがって誤差が大きくなることが懸念される。そこで、上記術式での投影の誤差が許容される範囲内であった場合、さらに深部の構造物の描出に用いる。このため、脳室穿刺を必要とする水頭症の患者20例を目安にこの技術を適応する。さらに、続く年度ではこれらの手法の有用性につき詳細に検討する。特に従来のコンピューターディスプレーに描出するナビゲーションとの比較や、この手法を用いたことによる手術結果の客観的な評価を慎重に行う。
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