研究実績の概要 |
【背景と目的】PD治療においてDBSが重要な治療選択肢の一つであることは、ここ数年の研究から明らかである。しかし、もちろん全ての症例にDBSが必要なわけではなく、どういった症例にDBSを積極的に導入すべきか明らかでない点も少なくない。そこで、脳深部刺激療法の長期予後が良好なパーキンソン病症例の術前状態の特徴を検討した。長期的に良好な予後が期待できる症例はいかなる特徴を有するかを知ることにより、より適切な手術症例の選択が可能となるはずである。 【対象と方法】当院にて手術を行い術後5年以上の経過を有し、Schwab & England scaleがoff時80ポイント以上のA群(n=33)と80ポイント未満のB群(n=33)に分け、発症年齢、罹病期間、手術時年齢、術前の内服状況、術前のUPDRS、HDS、MMSEなどについてその相違点を検討した。2群間の比較にはMann-Whitney-U-testを用いp<0.05にて有意と判断した。 【結果と総括】A群とB群で有意差の認められたものは、発症年齢(p<0.05)と手術時年齢(p<0.01)であった。罹病期間には有意差は検出されなかった。術前のMMSEには有意差が認められた(p<0.01)。さらに、単変量解析にて有意差が認められた全ての要因についてmultiple logistic regression analysisによる多変量解析も行ったところ、手術時の年齢 (odds ratio 1.247, 95%CI: 1.061~1.467)、術前のMMSEスコア (odds ratio 0.754, 95%CI: 0.592~0.96)、術前S&Eのoff-periodのスコア (odds ratio 1.247, 95%CI: 1.061~1.467)が有意な独立変数であった。以上より発症年齢と手術時年齢がともに若く、認知機能の低下していない症例に、術後長期的なADLの自立が期待できると考えられた。
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