パーキンソン病は大脳皮質-大脳基底核を中心とした運動制御機能に異常をきたした状態であるがその病態については不明な点が多い。パーキンソン病に対して行われる脳深部刺激療法の手術中に、電極留置部位の目標構造である視床下核を同定することを目的として微小電極を用いた脳深部の神経活動記録が行われる。微小電極記録では周辺構造に比較して背景活動の増大が視床下核では観察され、これを指標として刺入経路上で視床下核の背側境界および腹側境界を同定することができる。 本研究では、背景活動と同時記録された局所電場電位(local field potentials: LFPs)からβ帯域のオシレーション活動を同定し、背景活動によって同定された視床下核内でのβ帯域のオシレーション活動を分析し、視床下核内でのβ帯域のオシレーション活動の分布を検討している。その結果、6側中3側ではSTN外よりもSTN内でβ帯域のオシレーションのパワー(βパワー)が有意に高値を示し、STN内でβパワーの最大値を示した部位を検討した結果、6側中5側でSTN内の背側部であった。STN内の背側部でβパワーが亢進している結果は運動感覚領域であるSTNの背側部でβ帯域のオシレーションが亢進しているという従来の報告と一致する結果であった。更にSTN外のβパワーについて検討したところ6側中5側でSTN外の背側部(STNの背側境界から平均2.8mm)で高いβパワーが同定された。このうち2側のSTN外の背側部の高いβパワーは、STN内の平均βパワーよりも高値であった。こうしたβパワーは視床等の周辺構造の活動を反映していると推測された。
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