研究課題/領域番号 |
15K10375
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
山本 隆充 日本大学, 医学部, 教授 (50158284)
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研究分担者 |
深谷 親 日本大学, 医学部, 准教授 (50287637)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脳卒中後疼痛 / 脊髄刺激 / ケタミン / ドラッグチャレンジ テスト / 運動麻痺 |
研究実績の概要 |
脳卒中後疼痛22例に対して、ケタミン、ラボナール、モルフィンを用いたドラッグチャレンジテストならびに脊髄刺激を行い、除痛効果を比較した。ケタミン有効例では無効例に比較して、有意に脊髄刺激によるvisual analogue scale (VAS)が低下した(p<0.01, Mann-Whitney’s U test) が、ラボナールならびにモルフィンの有効例と無効例の比較ではVASの減少率に有意差を認めなかった。また、ドラッグチャレンジテストと脊髄刺激によるVASの減少率についてregression analysisを行うと、ケタミンでは相関を認めた(p=0.001)が、ラボナール(p=0.227)ならびにモルフィン(p=0.171)では相関を認めなかった。一般的に脊髄刺激は脳卒中後疼痛に対して無効例が多いとされているが、ケタミンテストが有効な症例を選択して脊髄刺激を行うことによって成績が飛躍的に向上することを明らかにした。 脳卒中後疼痛を対象として、脊髄の硬膜外へ平行に2本の刺激電極を挿入するDual-lead spinal cord stimulation (Dual-lead SCS)を施行した。上下肢に疼痛を認める症例では、13例中10例において経髄レベルのDual-lead SCSで疼痛側半身に刺激感覚(paresthesia)を誘発することができたが、3例では下肢のparesthesiaを誘発することが困難であったので、1本を頚髄レベルに留置し、他の1本を胸腰椎レベルに留意した。脳卒中後疼痛のように顔面、体幹、上下肢を含むような広範囲に疼痛を認める症例では、頚髄レベルでのDual-lead SCSが有効であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳卒中後疼痛に対するドラッグチャレンジテストならびに脊髄硬膜外腔にシリンダー型電極を並行に2本留置するDual-lead SCSを順調に行っている。また、ドラッグチャレンジテストで、ケタミンが有効な症例を選択することによって、Dual-lead SCSの効果を高めることができることを明らかにした。 特に脊髄刺激では顔面に刺激感覚(paresthesia)を誘発することは困難と考えていたが、C2レベルの刺激で顔面にもparesthesiaを誘発することが可能であることを明らかにし、脊髄刺激の有用性を再確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
脳卒中後疼痛に対して、ケタミン、ラボナール、モルフィンを用いたドラッグチャレンジテストを行い、なるべくケタミンが有効な症例を選択してDual-lead SCSを施行する。 またDual-lead SCSでは、顔面、上肢、体幹、下肢などの半身に及ぶ疼痛例では、頸髄レベルの刺激を行い、下肢の疼痛例では胸腰髄レベルの刺激を行い、脳卒中後疼痛に対する脊髄刺激療法の適応ならびに治療法を確立する。さらに疼痛のみならず、運動麻痺を認める症例においては、除痛のために20Hzで軽度の刺激感覚を誘発する刺激を適時行うのと同時に、5Hzでmuscle twitchを誘発する刺激を併用する。5Hzでmuscle twitchを誘発する刺激は1回に5分間とし、1日にこの刺激を5回行う。これによって、手の開閉速度、握力、誘発筋電図記録を行い、運動機能の改善について検討する。本法によって、脊髄刺激による新たなニューロモデユレーション技術を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
オーストラリアのケアンズで開催されたアジア・オーストラリア定位・機能神経外科学会で本研究の成果を発表した。直行便がLCCのみで、航空券が予定よりも格安となった。脊髄刺激の効果について、温覚と冷覚を正確に測定できる装置を用いて研究を行っているが、この機器のメインテナンスにおいてガス交換と内部の部品交換を予定していたが、部品の供給が4月になるとのことで、部品交換の費用が含まれていない。
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次年度使用額の使用計画 |
4月以降に温覚と冷覚を正確に測定できる装置の部品交換の費用に使用する。また、格安となった航空機代は、今後の海外での学会発表の費用に充当する。
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