研究課題/領域番号 |
15K10375
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
山本 隆充 日本大学, 医学部, 教授 (50158284)
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研究分担者 |
深谷 親 日本大学, 医学部, 准教授 (50287637)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脳卒中後疼痛 / 脳卒中後運動麻痺 / 脊髄刺激療法 |
研究実績の概要 |
脳卒中後の疼痛と運動麻痺を認める症例に対してドラッグチャレンジテストを施行し、ケタミンが有効な症例を選択してDual-lead SCSを施行した。脊髄刺激の方法としては、疼痛部に刺激感覚を誘発する部位に電極を2本平行に留置し、20Hzでparesthesia(刺激感覚)を誘発する刺激強度で疼痛の抑制を目的とした刺激を行った。また、8極x2本で16極ある刺激部位から、頚髄レベルの刺激では上肢、下部胸椎レベルの刺激では下肢に muscle twitchを誘発する程度の刺激強度で5Hzの刺激を行った。 ケタミンが有効な症例では、テスト刺激を行なった27例中の21例(77.7%)で慢性植え込みを行った。これは通常に報告されている慢性植え込みの頻度よりも明らかに高率であり、ケタミンが有効な症例を選択したことが理由として考えられた。これらの慢性植え込みを行った症例において、20Hzで疼痛部位にparesthesiaを誘発する刺激は自由に患者さんが施行し、5Hzでmuscle twitchを誘発する刺激は1回に5分間とし、これを毎日5回施行することとした。 これまでにフォローアップした7例では、10秒間にできる手の開閉の回数が1か月で、また握力が3か月で統計学的に有意な改善をみとめた。以上の結果から、20Hzの通常の刺激に5Hzでmuscle twitchを誘発する刺激を併用する方法は、脳卒中症例に対する新たなニューロモデユレーション治療として期待される。脳卒中後疼痛に対する脊髄刺激療法が運動麻痺の改善にも有効であることが明らかになり、今後の発展が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳卒中後疼痛に対する脊髄刺激療法は、これまであまり推奨されてこなかった。しかし、ケタミンが有効な症例を選択することによって、脳卒中後疼痛に対しても脊髄刺激が有効であることを確認できた。それで、20Hzの疼痛治療を目的とする脊髄刺激に加えて、5Hzのmuscle twitchを誘発する刺激を併用することができた。 脳卒中後疼痛についての脊髄刺激の効果が議論されてきたが、今回の研究によって疼痛のみならず脳卒中後の運動麻痺についても刺激方法を工夫した脊髄刺激が有効であることを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
20Hzでparesthesiaを誘発する刺激が疼痛治療に有効で、5Hzでmuscle twitchを誘発する刺激が運動麻痺の治療に有効であることを確認した。今後は、上肢のmuscle twitch を誘発することができる頚髄レベルの刺激と下肢のmuscle twitchを誘発することのできる下位胸髄刺激を併用し、上肢と下肢の回復程度の比較を行う。これまでの結果から、脊髄後索刺激によって、脊髄反射弓を介してmuscle twitchを誘発することができることを報告している。今後は、各種の運動評価のためのパラメターを比較し、脊髄刺激による運動機能回復の機序について考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は世界ニューロモデユレーション学会に参加する必要があるため、旅費と参加費のことを考慮した。また、最終年度のため学会で発表する機会が多いことも考慮して、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
世界ニューロモデユレーション学会が英国のエジンバラで開催されるため。
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