研究課題/領域番号 |
15K10379
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究 |
研究代表者 |
大谷 直樹 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 病院 脳神経外科, 講師 (20573637)
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研究分担者 |
森 健太郎 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 脳神経外科学, 教授 (30200364)
石原 美弥 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医用工学, 教授 (30505342)
平沢 壮 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医用工学, 助教 (60583086)
和田 孝次郎 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 脳神経外科学, 准教授 (70649409)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脳神経外科 / 顕微鏡下手術 / 光音響技術 / 脳血管障害 |
研究実績の概要 |
脳外科手術において病変部と周囲脳血管との位置関係を迅速、的確、かつ再現性良くリアルタイムに術中確認することが重要である。昨年までに動物血腫モデルにおいて病変部と周囲血管の画像を取得してヘモグロビン描出に優れた波長の励起光を見出した。予備実験で光音響画像化技術では高いコントラストで血腫の描出が出来ることが確認されたが、空間分解能が課題であった。本年度はより高空間分解能である装置を用いてコントラスト及び空間分解能を評価することで脳表血管や脳表病変の近傍に存在する血管の描出能力の向上に努めた。その結果、血腫除去術、脳血管奇形摘出術、脳腫瘍摘出術等の脳外科手術への臨床応用をすすめた。なた、血行再建術におけるドナー血管の確認について安全に非侵襲的に行うことが可能であると思われる。今回、光音響装置はICGと励起光の波長が合致することが判明したため今後は、ICG造影することでより鮮明で正確な走行位置情報が得られるものと期待している。さらに頸動脈プラークの性状分析に関して脂質、およびコレステロールとで異なる特性を有する光波長を同定した。今後は、これらの励起光を用いて正常血管と不安定プラークとの相違、あるいはプラークの性状分析、すなわちプラークにおける脂質含有量分析への応用を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)血行再建術における光音響技術の有効性の検証ウ サギ鼠径部、およびひと前腕における血管分布状況の視認した。ウサギ鼠径部とひと前腕における血管分布像を取得した。右側のヒト上腕における光音響計測では橈骨動脈、ならびに上腕静脈の走行は確認できるものの深部に低エコー領域が視認されその意義について今後の検討課題である。 2)脳腫瘍への応用 脳腫瘍病変に対して光音響画像を取得した。低エコー領域の辺縁に沿って高信号な部分と,低エコー領域の内部が更新号な部分の両方を確認した。低エコー領域以深 (表面から約10 mm)を走行する血管像を確認することに成功した。さらに低エコー領域以深に強信号を確認したが、アーティファクトであるか実信号であるかの鑑別が必要であった。 3)頚動脈プラークの不安定性評価における光音響技術の有効性の検証 光音響画像化技術をプラークの不安定性評価に応用するための基礎検討として,不安定プラークの光吸収特性の計測を行った。光吸収特性を計測する手段として,近赤外分光法を用いた。本法では,光音響画像化技術と同様に,計測サンプルの光吸収特性を非破壊に評価できる。本法は空間分解能が低く,計測深さが浅い欠点を有するが,広い波長域での光吸収特性を一度に計測できる利点を有する。本法を用いて,頸動脈内膜剥離術(CEA)により摘出した検体の光吸収特性を解析することにより,正常血管と不安定プラークとで異なる特性を有する光波長を同定した。
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今後の研究の推進方策 |
1)血行再建術における光音響技術の有効性の検証 通常,血行再建術に使用するドナー血管は、経皮的に確認する際には術中ドップラー血流計,ならびに動脈拍動を触知しながらマーキングしている。しかし,非常に細い血管では走行を把握することは困難であり,さらに全身麻酔下では触知困難となりさらに走行を把握することは困難を極める。本装置を用いることでSTA-MCA bypass術前にドナー血管の確認を安全に非侵襲的に行うことが可能であると思われる。今回、光音響装置はICGと励起光の波長が合致することが判明したため今後は、ICG造影することでより鮮明で正確な走行位置情報が得られるものと期待している。 2)脳腫瘍への応用 血管なのかどうかを鑑別するのに役立つものと思われる。画面を見る際に邪魔なのであれば,信号取得中に画面に表示せずにデータのみを取得することも可能であるため今後は同時に画像取得するように努める。さらに十分な開頭範囲が得られる場合には,プローブを一定速度でスライドさせるように走査することで,疑似的に3次元像を構築することが可能あることが判明した。今後検討する予定である。 3)頚動脈プラークの不安定性評価における光音響技術の有効性の検証 頸動脈プラークの不安定性評価に関する検討では,CEA摘出検体を対象に得た近赤外分光計測の結果において,プラーク形成部位と正常血管との間で大きな差が生じたのは(980, 1170, 1200, 1650 nm)であり,特に1170, 1200 nmにおいては高い再現性が得られた。これらの波長は脂質及びコレステロールの吸収ピークに相当するため,プラークを構成する脂質及びコレステロールに由来する信号を検出していると考えられる。今後、さらなる症例数の蓄積とプロト機を準備する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗状況のなかで依然として必要物品が、未だ調整中であるため次年度使用額が生じているものと思われる。さらに今年度、学会発表や論文作成にかかる経費が残存している状況である。
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次年度使用額の使用計画 |
研究消耗品 50,0000、学会発表における交通費・宿泊費 20,0000、論文作成における諸経費 20,0000、イラスト作成 10,0000。以上がおおよその概算である。
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