研究課題/領域番号 |
15K10385
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
大鳥 精司 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (40361430)
|
研究分担者 |
高橋 和久 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (20179477) [辞退]
山内 かづ代 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任講師 (30648069)
折田 純久 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (60638310)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 腰痛 / サイトカイン / 疼痛 / 治療 |
研究実績の概要 |
慢性腰痛患者の病態には解剖学的な変性や神経における化学的炎症,脊柱を支持する組織の不均衡性など複数の病態の関与が報告されているが,その中でも 椎間板の変性に伴い産生されるIL-6,VEGF(vascular endothelial growth factor)などの炎症性サイトカインの関与が大きな一因として報告されている.これらの症状に対しては従来汎用されている鎮痛薬も効果を呈しにくいことが知られているため慢性腰痛の遷延化につながり,患者数の増加や医療経済への負担につながるためその対策が急務となっている.対象は保存加療に抵抗する腰下肢痛患者10症例(男性4例,女性6例,平均年齢65.5歳).診断は腰部脊柱管狭窄症,変性すべり症,腰椎椎間板症であり,トシリズマブ162mg皮下注を2週間隔で2度施行.施行前・後1か月で血清IL-6,TNFα,VEGF値を測定した(これらは疼痛のバイオマーカーとして考えた).検討項目は投与前・後翌日,1,2,4,8週の腰痛,下肢痛,しびれのNRS, 投与前・後4,8,12週のODI,血清サイトカイン値の推移(投与前・後1ヶ月),有害事象とした.その結果,トシリズマブ皮下注によりすべてのNRS,ODIは投与前と比較し12週に亘り統計学的有意差をもって改善を認めた(p<0.05).血清VEGFが投与前後で統計学的に低下した(p<0.05).トシリズマブ全身投与は明らかに有効であり,血清VEGF値は症状改善と相関し疼痛バイオマーカーとなる可能性が示唆された.また抗VEGF抗体も慢性腰痛に有用であり,これ等の結果は,今後の新たな展望と考えられた.
|