研究実績の概要 |
不安定性を有する骨粗鬆症性脊椎の手術治療において、動的な背椎固定を用いた場合の力学的有用性について、有限要素解析と模擬骨を用いた力学実験を行い検討した。 本研究では、骨密度の異なる(それぞれ骨密度は0.740 g/cm3, 0488 g/cm3, YAM値は66%、44%)の第9胸椎から第3腰椎のCTデータを使用し、2つの脊椎モデルで検討した。使用した脊椎インストルメントはチタン合金と同様の剛性を持たせたモデルと、より柔軟で動的な固定を想定した剛性の低いモデルを組み合わせて解析した。模擬骨を用いた検討では、椎弓根スクリューを挿入し、従来の脊椎ロッドを用いて固定を行ったモデルと動的な動きを許容するロッドを用いて固定を行ったモデルを解析した。また、第10胸椎-第11胸椎のCTデータを抽出し、三次元積層造形技術を用いた骨粗鬆症性脊椎モデルの作成を行った。 多椎体での解析において、YAM値66%のモデルでは、破壊要素数に大きな差異を認めなかったが、骨密度値の低いYAM値44%のモデルでは、椎体の破壊要素数、スクリュー近傍の応力値ともに剛性の低いモデルで抑制されていた。模擬骨を用いた力学試験では、従来の脊椎ロッドでは有意に引き抜き強度が低下していたが、動的な固定を想定した剛性の低いロッドでは低下を認めなかった。三次元積層造形技術を用いた骨粗鬆症性脊椎モデルの作成は可能であり、骨孔を作成し椎弓根スクリュー挿入を行なったが強度的な問題から、力学的な検討には至らなかった。 本研究の結果より、適度な動きを許容する動的ロッドを用いた脊椎固定を行うことで、椎弓根スクリューの緩みや固定隣接椎体骨折などの予防に繋がり、重症骨粗鬆症椎体骨折に対して有用な治療法のひとつになることが示された。
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