研究課題/領域番号 |
15K10391
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
竹浦 直人 福井大学, 学術研究院医学系部門, 特別研究員 (00615304)
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研究分担者 |
中嶋 秀明 福井大学, 学術研究院医学系部門, 講師 (10397276)
内田 研造 福井大学, 医学部, 教授 (60273009) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 頚椎症性脊髄症 / 神経障害性疼痛 / MAPK / マクロファージ / 脊髄血液関門 |
研究実績の概要 |
頚椎症性脊髄症では運動感覚障害に加え、疼痛発現という問題があります。私たちが参加させて頂いた脊髄障害性疼痛に関する多施設研究の結果では、疼痛を引き起こす原因疾患は上位から頚椎症性脊髄症、脊髄損傷、後縦靭帯骨化症でした。慢性脊髄圧迫に起因する疼痛や感覚障害の病態は複雑かつ難治性であり、日常生活動作や健康寿命に多大な影響を及ぼします。脊髄障害性疼痛が生じる機序はいくつかの報告がありますが、そのひとつに脊髄後角でのグリア系細胞の活性があります。そこで、本研究では、ヒト頚髄症の病態をシミュレートする慢性脊髄圧迫モデル(twy/twy マウス)を用いその上位頚髄圧迫部位での解析を行いました。twy/twy マウスは、生後6から8週頃より後環軸膜を中心として石灰化が生じ、加齢に伴い、四肢麻痺が進行し、特徴的なtip-toe walkingを開始します。tyw/twy マウスの頚椎圧迫部位のマイクロアレイを行ったところ、GeneOntology解析で圧迫程度に応じて疼痛関連因子遺伝子の上昇がみられました。私たちは、その中でMAPKに着目しました。評価項目として圧迫程度に応じた脊髄後角に発現する疼痛関連物質の組織化学的評価や血液脊髄関門の微細構造変化について検討しました。さらに、脊髄内microglia活性および血液脊髄関門の破綻により脊髄内へ流入しうるmacrophageの組織学的評価のため、GFPを発現する遺伝子改変マウス骨髄をtwyマウスに移植し、疼痛が慢性化する病態や慢性圧迫脊髄が有する潜在的再生能力(脊髄の生存活性と可塑性)を検討しました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
twy/twyマウスの供給や飼育に長期間必要なことが本研究の進捗状況に影響する。更に、高度圧迫脊髄の定量的評価が困難であり、評価方法の検討を重ねている。
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今後の研究の推進方策 |
①GFP発現遺伝子改変マウス骨髄の慢性脊髄圧迫モデルマウス (twyマウス)への移植:twyマウス(9週齢、15週齢、21週齢)に放射線照射(0.5Gy/min×9分間)を1日目および2日目に行い、4日目にGFPマウス(C57BL/6-Tg, CAG-EGFP)の大腿骨および脛骨から採取・精製・培養した骨髄細胞を尾静脈から移植する。3週間後に頚髄を摘出して評価を行う。 ②慢性脊髄圧迫モデルマウス (twyマウス) の脊髄における血液脊髄関門の免疫電顕による微細構造の観察:twyマウス脊髄標本の各圧迫高位における血液脊髄関門の経時的な変化を、アルブミン、PDGFRαおよびMMP-9を用いて組織化学的に評価し、透過電顕で血管内皮細胞などの構造的な変化を解析する。更に、上記③で作成したGFP骨髄移植twyマウス(キメラマウス)の脊髄内に存在するmacrophageとmicrogliaの分画(割合)を評価。 ③慢性脊髄圧迫モデルマウス (twyマウス)の疼痛に関する病態の解析:上記①で作成したtwyマウス(キメラマウス)を用いて、脊髄内 microgliaと血管脊髄関門を通過して遊走するmacrophageを区別し、上記②で評価した疼痛関連物質のsourceを免疫組織化学的およびflow cytometryを用いた評価で解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
補助事業の誠実な執行に努めた結果、研究成果を論文として発表するために、追加実験が必要となったため、当初計画より経費の使用を節約した。
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次年度使用額の使用計画 |
当該未使用額を次年度に持ち越して、研究成果を英語論文として発表するための経費として使用する予定である。
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