研究実績の概要 |
ラット椎間板変性モデルにおけるマクロファージの浸潤を組織学的、免疫組織化学的に調査した。ラット尾椎椎間板に針を刺し、針刺し後1日、3日、1週、2週、4週、6週、8週の変化を観察すると、針刺し後1週から2週までに椎間板周囲への血管進入とM1マクロファージの浸潤がみられ、2週目以降は椎間板内に血管新生を認め、M1マクロファージは減少し、M2マクロファージが増加していた。GFP 陽性骨髄細胞移植キメララットにおける同様の実験で、これらマクロファージは骨髄由来であることが確認された。ラット尾髄DRGにおける疼痛関連タンパクは、1週から2週がピークであり、M1マクロファージの浸潤との関連が示唆された。DNAマイクロアレイ法によるクラスター解析で、穿刺後2週の椎間板ではTNF-α、IL-1の遺伝子発現が上昇し、pathway解析でもそれらに関連する遺伝子発現が上昇していた。 ヒト頚椎椎間板semi-en bloc標本における、血管新生、マクロファージの浸潤、神経伸長について観察を行った。脱出型のヘルニア椎間板組織では、非脱出型のヘルニア椎間板、頚椎症椎間板に比べ、血管新生とその周囲のマクロファージの浸潤および神経伸長が著明に観察された。マクロファージの極性は、M1, M2マクロファージが混在して存在していた。M1マクロファージとM2マクロファージの比(M1/M2)が大きい肉芽組織において、神経線維が多く観察された。 変性椎間板におけるマクロファージは、血管新生に伴い骨髄由来のマクロファージが浸潤し、変性椎間板の吸収のみならず、その極性変化により疼痛発現に関与し、M1/M2比が大きい肉芽組織での神経伸長が観察されたことから、神経伸長に影響を及ぼしている可能性があることが示唆された。
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