先天性側弯症は全脊柱変形の約10~20%を占めるがその原因は不明である。腰背部痛、不安定な姿勢バランス、および内臓の圧迫が患者のQOLを著しく低下させる。重症例では外科的手術が行われるが完全な機能回復は困難である。 今回、AGBL5遺伝子上にde novo変異を新規に同定した。AGBL5遺伝子はヒト、マウス、ゼブラフィッシュなど種を超えて保存されるため、生命現象に重要な役割を果たす遺伝子と考えられる。 また、生後早期のゼブラフィッシュを用いて、whole-mount in situ hybridizationを行い、脳、眼、胸ひれの一部にAGBL5遺伝子の発現を認めた。さらに、遺伝子特異的ノックダウンにより背側化促進現象を認めた。つまり、AGBL5遺伝子の機能喪失が起こると体軸形成に影響を与える可能性が示唆された。生体の背側化・腹側化現象には骨形成タンパク質であるBMPシグナル、WNTシグナルなどが主に関与する。そこでまず、AGBL5とBMPシグナルの関連性を調べた。AGBL5と骨形成タンパク質であるBMP2bの共発現により、BMP2b過剰発現に伴う腹側化促進現象がAGBL5過剰発現によりレスキューできた。以上より、AGBL5はBMPシグナルを制御している可能性が示唆された。さらに、マウス10T1/2細胞を用いた実験ではAGBL5のトランスフェクションによりアルカリフォスファターゼ活性の低下をみとめた。結果、AGBL5はゼブラフィッシュ、培養細胞を用いた実験によりBMPシグナルを制御している事が明らかとなった。 以上よりAGBL5は先天性側弯症の原因遺伝子の1つである可能性が高い。
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