研究課題/領域番号 |
15K10398
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
安藤 圭 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (40566973)
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研究分担者 |
今釜 史郎 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (40467288)
伊藤 全哉 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (50447819)
小林 和克 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (00706294)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自己集合性ペプチドゲル / 脊髄再生 / 足場 |
研究実績の概要 |
近年の研究では損傷神経を再生する試みとして、ES、iPSを含む神経幹細胞、骨髄幹細胞、シュワン細胞、歯髄幹細胞移植の有効性が明らかとなり、脊髄損傷後の再生医療を中心とした期待が高まっている。しかし移植の損傷部位への有効性を高めるためには、移植細胞の分化の方向性を誘導する神経栄養因子および移植細胞の足場(scaffold)の併用が必須とされる。本研究では日本独自の技術を融合した世界初の施術を行うことで、迅速な骨癒合の達成を補助するための早期骨再生術に不可欠な足場材料として、自己集合性ペプチドゲルを開発した。このゲルは100%化学合成ペプチドSPG-178を主成分とする含水性ゲルである。同ペプチドは水に溶解すると水素結合や静電的相互作用などにより自発的に集合し、β-シート構造からなるナノファイバーの3次元網目構造を形成することで水溶液はゲルとなる。 このゲルは内部で3次元細胞培養が可能であり、ゲル内で脊髄再生に関与する細胞の増殖が期待できる。現在までに得られた結果として、脊髄前角細胞より採取した初代神経細胞培養において神経軸索突起が有意な伸長効果、神経栄養因子(BDNF、GDNF、NGF、NT4/5)およびその受容体(TrkA、TrkB、TrkC)の発現上昇を確認できた。またin vivoにおいてはこれらの因子に加え神経軸索再生に関与しているMMP-2, 9の発現上昇と脊髄損傷後の神経再生阻害に関与するグリア性瘢痕の減少を認めた。これは一度損傷が生じても、細胞が発育するに快適な環境が存在することで得られた結果と判断できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脊髄損傷モデルマウスにおいて自己集合性ペプチドゲル投与後7日後から神経成長因子の発現量が増加し、神経再生の促進が投与後速やかに開始されたと考えられた。また、MMP-9、3の発現量が投与7日後に最も高い値を示し、経時的に低い値となった。そのため、神経再生開始後は、これらの因子による炎症が抑制されると考えられた。また物理的バリアーとなり軸索伸長を阻害し得る繊維性瘢痕(Collagen type4染色)では、染色範囲が減少していることが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
脊髄損傷において、生体に安全で体内でも安定した効果を示す移植細胞併用PanaceaGelの運動機能回復、下肢知覚回復効果、補助療法(リハビリテーション)を明らかにし、PanaceaGelの臨床応用を目指していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
in vivioにおけるペプチドゲルの抗炎症メカニズムについて追究するため、同一分野において研究を行っている研究者と意見交換・検討を行う予定が4月、5月にずれ込んだため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
新規自己集合体ペプチドゲルの効果・役割・その効果について、広く研究者に周知したく、学会においての研究成果発表、並びに同一分野研究者との意見交換を行うための旅費に充てたい。
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