研究課題/領域番号 |
15K10405
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田中 啓之 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00432542)
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研究分担者 |
岡田 潔 大阪大学, 医学部附属病院, 講師 (40576279)
岡 久仁洋 大阪大学, 学内共同利用施設等, 助教 (50724085)
村瀬 剛 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50335361)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シュワン細胞 / ミトコンドリア / 神経因性疼痛 |
研究実績の概要 |
シュワン細胞のミトコンドリア機能制御に関わる薬剤の探索のため、NAD+/NADH値を指標にして研究を行った。生後1-3日のラット坐骨神経を採取し、酵素処理することでラットシュワン細胞の単離、培養を行った。シュワン細胞培養液中に、FDA認可薬ライブラリーをそれぞれ添加し、NAD+/NADH値を指標としたスクリーニングを行った結果、末梢神経障害治療薬として使用されているメチルコバラミンが候補物質の1つとして着目された。すなわち、メチルコバラミンはNADH値を低下させることで、NAD+/NADH値を上昇させることが分かった。そこでメチルコバラミンを用いてシュワン細胞に与える影響、および動物モデルを用いて実験を進捗させた。BrdU assay、細胞実数計測にてメチルコバラミンによるシュワン細胞の増殖アッセイを行ったが、有意な影響は認められなかった。またシュワン細胞をTNF-aを添加した増殖メディウムで培養しアポトーシスを誘導したが、メチルコバラミンによるアポトーシス抑制効果は認められなかった。一方で、シュワン細胞培養液にdb-cAMPを添加した分化メディウムで培養し分化誘導したところ、メチルコバラミンは分化促進効果を示すことが分かった。またその際に、Erk1/2のリン酸化を阻害することで分化促進効果を示していることが示唆された。シュワン細胞と後根神経節細胞の共培養においても、メチルコバラミンは分化促進効果を有することが示された。またラット坐骨神経にlysophosphatidylcholineを投与することで局所脱髄モデルを作製することができるが、そのモデルラットにメチルコバラミンを全身投与することで、坐骨神経脱髄後の再髄鞘化が促進されることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
シュワン細胞培養液中に各種薬剤を添加しスクリーニングを行ったが、比較的早い段階で候補物質の1つを見つけることができた。またその候補物質であるメチルコバラミンは、我々が以前より着目していた薬剤であったことから、薬剤入手、適切な濃度設定・投与方法などスムースに実験が進捗した。またシュワン細胞に対するメチルコバラミンの影響についても、ある程度のデータを持ち合わせていたために、順調な計画の進捗を認めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、シュワン細胞のミトコンドリア機能を反映する他の指標であるacylcarnitineについても、メチルコバラミン投与による影響について検討を行う。さらにシュワン細胞に対するメチルコバラミン投与の影響を網羅的に調べるために、メタボローム解析を行う予定としている。モデル動物としては、ラット神経障害性疼痛モデルの作製を予定している。左坐骨神経を露出し、坐骨神経を8-0絹糸で結紮することでSeltzer modelを作製する予定としている。またその他の神経障害性疼痛モデルとして、chronic constriction injury modelやspinal nerve ligation modelなどの作製も予定している。メチルコバラミンを全身投与することで神経障害性疼痛に対する治療効果判定を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
シュワン細胞培養液中に各種薬剤を添加しスクリーニングを行ったが、早期の段階で候補物質の1つを見いだし、絞り込むことができたために、大規模なスクリーニングアッセイの必要性がなくなったために経費節約が可能となり、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度にはモデル動物を数種類作製する予定であるため、主に実験動物の購入費用、飼育費に充当する予定である。
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