研究課題/領域番号 |
15K10410
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
河村 一郎 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員准教授 (90535832)
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研究分担者 |
前田 真吾 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 特任准教授 (60353463)
小宮 節郎 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (30178371)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 後縦靭帯骨化症 / 軟骨細胞分化 / SnoN / Smpd3 |
研究実績の概要 |
脊柱後縦靭帯骨化症(OPLL)は、神経麻痺から深刻な日常生活障害を来たす難病であり、外科的治療以外に有効な根本予防・治療法はない。厚生労働省の研究班でも精力的にゲノム解析(GWAS)が行われているが、その原因遺伝子如何に関わらず、そのアウトプットは脊柱靭帯骨化が靭帯組織の変性により内軟骨性骨化様変化をとる病理事象はコンセンサスが得られている。本研究では靭帯細胞が軟骨細胞に変換される経路に1)直接のtransdifferentiation、あるいは2)一旦間葉系前駆細胞に脱分化し、3)これが軟骨細胞へ分化、そして最終的に4)軟骨細胞肥大・成熟を経て骨化に至る、という4段階を想定し、それぞれに関わる遺伝子をマウスとヒト臨床サンプルを用いて解析している。 上記1)と2)に関しては、後縦靭帯特異的な遺伝子発現変化をヒトのサンプルで検索するのが原因解明へのstraight forwardな戦略であるが、第一にヒトの健常靭帯の採取は倫理的にかなり制限される事、第二にヒトはgenetic backgroundの差が激しい事から、まずはC57BL/6マウスの後縦靭帯と他部位の靭帯からのmRNA採取を行い、比較することにした。しかしマウスの後縦靭帯は小さく、ごく微量のmRNAしか採れない為に解析は困難であった。かつ今後immunoblot等の蛋白レベルの検証も考えると複数個体のサンプルの合算として解析するなどの工夫が必要で、その点で条件検討を行っている。一方で、4)の候補遺伝子については、すでに我々は軟骨細胞の異常分化成熟制御因子としてSnoNとSmpd3を同定しており、まずOPLL臨床組織におけるこれらコード蛋白の発現を、免疫組織化学染色で検討を開始した。OPLL靭帯組織の軟骨様変性部位から肥大軟骨様変性部位への発現の有無を、症例を増やしながら確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予想に反して、マウスの後縦靭帯からのmRNA採取には難渋して、若干のマテリアルの調整方法や対象の変更などの条件検討を強いらている。 しかし、SnoNとSmpd3のOPLL組織における蛋白発現解析は、順調に開始し進行している。
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今後の研究の推進方策 |
マウスの後縦靭帯mRNA調整条件が定まったならば、予定通りにマイクロアレイ解析、定量的RT-PCR解析による確認、GWAS結果との比較を行い、一時スクリーニングを行う。 この候補遺伝子群の中から、年齢と性差による発現の違いがあるとの仮説の元に、12ヶ月齢と2ヶ月齢、それぞれ雌雄の4グループ(n=4 以上)から頸椎後縦靭帯を採取してmRNA を調整し、定量的RT-PCR(qRT-PCR)法にて、老齢雄マウス特異的な遺伝子を抽出する。 抽出遺伝子について、線維芽細胞におけるノックダウンと過剰発現実験を行い、各lineageの分化マーカーを検討し、その影響を考察して次の仮説を立てる。 ヒトOPLL組織におけるSnoNとSmpd3の発現解析は引き続き継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウス後縦靭帯mRNA採取などの条件検討が必要だったため、定量的PCRの施行回数が若干予定より少なかった事による。
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次年度使用額の使用計画 |
上記条件を決定し、本来の定量的PCR解析を再開する。
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