昨年度までに行った腰椎または頚椎MR撮像者の10-12年の経過観察では、自覚的な脊椎疾患を疑わせる症状の存在やその消長に関して、メタボリックシンドロームを含む内科的疾患が強い影響を与えているとは言えなかった。MRにおける神経圧迫の画像所見に対しても同様な結果であった。 そこで平成30年度は、頚椎MRの画像評価について、再検討を行った。 研究1.頚椎MRIにおける脊髄圧迫の程度と自覚症状、身体所見との関係:地域住民532名の頚椎MR T2 矢状断画像を用いて、椎間板高位(C2/3-C7/T1)での脊髄前後径(D)を測定し、C2椎体高位の脊髄前後径(DC2)との比(R=D/ DC2)を計算した。Study1として各個人の最小R値を抽出し、三分位法を用いて3 グループ (G1、G2、およびG3)に分類した。Study2としてC2/3からC7/T1における6椎間のR値の合計を算出し、三分位法を用いてstudy1と同様に3グループに分類した。【結果の概要】Study1、Study2ともに、頚髄圧迫の程度は、自覚的な歩行障害の出現に直接影響を与えていると考えられた。一方、頚髄圧迫の程度と身体所見としての索路徴候とは、直接の関係を見いだせなかった。 研究2.頚椎椎間板変性の評価法についての妥当性の検討:地域住民555名に対する頚椎MRにおいて、過去の報告で引用が比較的多い頚椎椎間板変性判定方法であるMatsumotoの分類(1998)、Miyazakiらの分類(2008)、Nakashimaらの分類(2015)、Lloydine J.Jacobsらの分類(2016)、およびSuzukiらの分類(2017)について検討した。【結果の概要】5つの頚椎椎間板変性分類は、年齢との相関や椎間高位別の分布に大きな差異を認めなかった。一方、検者内再現性は、分類方法により異なる可能性が示唆された。
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