研究課題/領域番号 |
15K10417
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
田中 康仁 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30316070)
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研究分担者 |
赤羽 学 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (40326327)
西 真弓 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40295639)
清水 隆昌 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (70464667)
堀井 謹子 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (80433332)
奥田 哲教 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (80646167)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脊髄損傷 / 骨髄間葉系細胞 / 細胞シート / 軸索再生 / グリア瘢痕 |
研究実績の概要 |
欠損部を有する脊髄離断モデルに対する再生医療では、欠損部を埋める足場としてのスキャホールドが必要となる。移植細胞をシート化することでスキャホールドを必要としない自家組織のみでの細胞移植が可能となる。我々はこれまでに骨髄間葉系細胞(BMSC)シートを作製し、軸索伸長の促進作用のある成長因子を発現していることを報告している。本研究では、脊髄離断モデルラットに対する急性期のスキャホールドフリーBMSCシート移植の効果・有用性を検証した。 【方法】7週齢F344ラット両側大腿骨から骨髄を採取しBMSCシートを作成した。F344ラットのT8高位の脊髄を完全に離断し2mmの欠損部を作製した。①BMSCシート移植群、②ゼラチンスポンジ移植群、の2群間で、術後2週・8週での組織学的評価(Tuj1、GFAP、MBPなど)、後肢運動機能評価(BBB score)を行った。 【結果】移植後8週におけるBMSCシート群のBBB scoreは、GS群と比較して有意に高かった(BMSCシート:GS = 5.25:3)。移植後2週のシート部においてもTuj-1およびGAP43陽性軸索数が多数見られた。移植後2週では再生軸索数に有意差は認めなかったが、8週ではBMSCシート群で有意に多かった。脊髄断端部におけるGFAP強陽性のreactive astrocyteが2週・8週ともにシート群で有意に少なく、その形がシート群で凹凸に変化していることがわかった。しかし、BMSCシート移植後8週においても明らかな再髄鞘化は見られなかった。 【考察】BMSCの分泌する成長因子や細胞外マトリックスが軸索伸長やグリア瘢痕抑制に関与していると考えられた。更なる後肢運動機能改善のためにはより多くの軸索再生や再髄鞘化が必要であるため、神経幹細胞とBMSCの共培養シートを作製しin vivoで検証していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
神経幹細胞とBMSCの共培養シートの作製は出来たが、その最適化を検討しており、ChABC処理したBMSCシートに神経幹細胞を共培養することが最も長く神経突起の伸長を得られることがわかった。また、硬膜残存脊髄離断モデルラットの作製が困難であり、硬膜の完璧な修復が得られていない。そのため、現在は脊髄離断モデルラットを用いた生体内移植実験をしている。上記の点で実験がやや遅れていると言わざるをえないが、硬膜残存脊髄離断モデルを除いた実験群でも、共培養細胞シートの脊髄損傷への効果の評価を行うことは可能であるため、主としては、脊髄離断モデルラットにてin vivoを行う予定とする。また本年度は、当院における遺伝子組み換え動物実験委員会にてGFPラットを用いた脊髄損傷実験の申請を今年度初頭に行い、移植細胞の動向を見る予定としている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、研究計画通りに、本年度はGFPラットを用いた移植細胞の動向検証を行う。それと並行して、最適化した共培養シートを移植し、移植後2週8週での軸索再生や再髄鞘化、運動機能改善やallodyniaの評価を引き続き行っていく。大きな実験計画の変更はないが、硬膜残存脊髄離断モデルラットの作製については技術的問題であるため、並行して今後も作製を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
182万の交付のうち180万以上は正当な実験費・学会発表費として申請しており、その差額の1万5千円未満が余ってしまった。実験物品で不必要な物を購入せずに、次年度に繰り越して、抗体(1つ7万円程度)などの購入費に充てようと考えたため、繰り越す事となった。
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次年度使用額の使用計画 |
抗体購入
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