研究課題
欠損部を有する脊髄離断モデルの脊髄再生医療では、欠損部を埋め、軸索再生の足場となるスキャホールドが必要になるが、我々は、スキャホールドが不要な骨髄間葉系細胞(BMSC)シートを作製した。脊髄欠損部に同シートを移植することで軸索再生の促進、グリア瘢痕(軸索再生阻害因子)の形成抑制、下肢運動機能改善を認めたことを報告した(Okuda A et al. Journal of Neurosurgery Spine 2017)。さらなる再生効果を得るために、神経幹細胞(NSC)の移植も必要と考え、BMSCとNSCの共培養細胞シートを開発した。共培養シート移植は、BMSCシート移植よりも、軸索再生と再生軸索の再髄鞘化を促進し、同等のグリア瘢痕形成抑制能を有していたが、後肢運動機能改善は同等であった(2017 annual meeting of Orthopedic Research Society)。さらなる細胞シートの改良が必要と考え、BMSCシートに含まれるコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)(軸索再生阻害因子)を分解処理した、ChABC-BMSCシートを作製した。Vitroで、BMSCシートよりも、ChABC-BMSCシートの方が有意に神経細胞の神経突起の伸長を促進することがわかった(2017 奥田哲教ら Journal ofSpine Research)。また、BMSCシートには、抗炎症効果をもつM2 phenotypeのマクロファージが多数存在していることがわかり、損傷脊髄部での抗炎症・神経保護に作用することでグリア瘢痕形成抑制効果を示す事が示唆された。BMSCシート移植による急性期のマクロファージの動態解析では、損傷後急性期におけるM2 phenotypeマクロファージの脊髄断端への集簇が促進されることがわかり、M2 phenotypeマクロファージによる抗炎症・神経保護作用が軸索再生を促進していることが示唆された(2019 annual meeting of Orthopedic Research Society)。今後は移植細胞シート内のM2マクロファージの移植後動態解明を行うとともに、配向性細胞シートを用いて軸索伸長の誘導を行う方針である。
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