研究課題/領域番号 |
15K10419
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
西 秀人 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (30382344)
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研究分担者 |
橋爪 洋 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (10326382)
谷口 亘 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (20453194)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 腰部席脊柱外病変 / 神経障害性疼痛 / パッチクランプ法 / インターフェロンγ / ミクログリア / Interferon-γ / 脊髄膠様質ニューロン / CCL2 |
研究実績の概要 |
これまでの本研究での結果において、腰部神経根の圧迫によって生じる神経障害性疼痛の形成初期には交感神経系による何らかの痛覚伝達に対する修飾が関与し、それによって脊髄膠様質における興奮性神経伝達物質のグルタミン酸の放出が定常的に亢進する神経可塑的な変化が起こる可能性が考えられることを報告してきた。また、腰部脊柱外病変における神経根の絞扼部位の違いは、疼痛強度の差と脊髄内ミクログリアの活性化の差をもたらすことを報告してきた。このミクログリアの活性化と脊髄膠様質細胞の興奮性との間には炎症性サイトカインの1つインターフェロンγ(IFNγ)が関連している可能性を指摘した。IFNγは興奮性伝達物質グルタミン酸の受容体であるNMDA受容体の作動薬を流した際に観察される脊髄膠様質細胞の一過性の緩徐な内向き電流(NMDA電流)を有意に増強する。このNMDA電流増強作用はIFNγ受容体拮抗薬と、ミクログリアインヒビターであるミノサイクリンにより抑制された。さらに電極内にIFNγの細胞内シグナル伝達経路であるJAK-STAT経路の阻害剤を混入してNMDA電流を観察したところ、増強作用は認めなかった。従って、IFNγはミクログリアにあるIFNγ受容体を介して作用していることが判明した。さらにニューロン-グリア間のクロストークを担っていると報告されている代表的なケモカインであるCCL2のアンタゴニストを共に灌流投与したところ、IFNγによるNMDA電流増強作用はブロックされた。このことからIFNγは脊髄後角内のミクログリアにあるIFNγ受容体に結合し、CCL2シグナリングを介して膠様質細胞のNMDA受容体を活性化していることがわかった。以上のようにIFNγはミクログリアを介した間接的な作用にてNMDA受容体を活性化していることが判明したが、このことは腰部脊柱管狭窄症における神経障害性疼痛形成に寄与している可能性がある。
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