研究実績の概要 |
腰椎変性疾患の原因の一つに椎間板変性が挙げられるが、現在のところ、椎間板変性を抑制する有効な治療法は確立されていない。今回の研究により、以下のことが明らかにされた。 我々は椎間板の変性進行に小胞体ストレス、特にUnfolded Protein Responseの一つであるPerk経路が関与していることを見出した( Fujii T, et al. J Orthop Res. 2018)。小胞体ストレスにおいては、まず当院の倫理委員会承認のもと、患者の手術検体から得られた椎間板サンプルを用い、また、我々が以前より用いているラット椎間板変性モデルとラット椎間板細胞培養モデルを使用してこれらの関与を証明した。まず、本研究ではヒト変性椎間板の電子顕微鏡にて椎間板細胞での小胞体ストレスが活性化している事を証明した。更に椎間板変性においてはPerk経路が活性化し、これにより椎間板変性に関与する炎症性サイトカインやマトリックス分解酵素の発現亢進し、、アポトーシスの誘導されることが認められ、将来、これらの経路を阻害することが椎間板変性抑止につながることが期待された。 また、炎症性サイトカインの一つであるIL-6と、その下流のSTAT3シグナルも変性に関与していることも報告した(Suzuki S, et al. Spine. 2017)。上記と同様の手法を用いて、椎間板変性ではIL6/STAT3の経路が活性化し、椎間板細胞培養モデルにおいて、STAT阻害剤投与が椎間板変性に抑制的働くことが判明した。将来、これらのSTAT阻害剤が椎間板変性抑制の新規治療の一つとして有効であることが示唆された。
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