研究実績の概要 |
京都大学で樹立されたintegration free iPS細胞4株(414C2、409B2、836B1、836B3)を当研究室で開発したEB法(Okada et al. Stem Cells 2008)を用いて胚葉体を形成した後、NS/PCsへと分化誘導する。これらの細胞にレンチウイルスを用いたルシフェラーゼ遺伝子導入(ff-Luc)を行い、 細胞増殖の度合いをBio Luminescence Imaging で確認すると共にこれらのiPS-NS/PCを血清条件でNeuron, Astrocyte, Oligodendrocyteに分化させ、従来のretroviral vectorにより作製されたiPS由来iPS-NS/PCとの相違を比較解析した。 In vitroではいずれも明らかな腫瘍化は認められず、いずれもNeuron優位の分化を示している。Retroviral vectorによる従来法でもpreliminaryには同様の結果が得られている。さらに、長期培養においても明らかなin vitroでの腫瘍形成は認められなかった。 これらのiPS-NS/PC各細胞株をNOD-SCIDマウスの胸髄圧挫損傷モデルの損傷中心部に,各5×105個ずつ、損傷後9日目に移植した。移植後3ヶ月間、IVIS systemによるbioimagingで細胞の生着・増殖の評価及び下肢運動機能評価(Basso Mouse Scale: BMS)などの機能評価を行った。移植後3ヶ月の時点で損傷部脊髄を採取し,組織学的解析を行うと共に、移植前の細胞と移植後3ヶ月の損傷中心部脊髄からそれぞれmRNAを抽出し、次世代シーケンサーによる網羅的遺伝子発現解析を行った。造腫瘍性836B3細胞株移植後3ヵ月の脊髄組織において、細胞増殖および腫瘍化に深く関わるFactor X, YのmRNA発現が、非腫瘍性の細胞株に比べて明らかに上昇していることが分かった。これらの組織中でのX, Y発現もまた免疫染色により増加していることが確認され、腫瘍化とX, Yの関連性に関して注目し新たな実験を検討している。
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