研究実績の概要 |
進行癌・骨転移症例の①転移椎体骨強度、②転移椎体隣接の正常椎体の骨強度、③それぞれの椎体の椎体強度の継時的変化を測定し、その後の有害事象発生の有無ならびにQOLを継続して調査している。登録症例は計24例である(肺がん8例、前立せん癌6例、乳がん5例、大腸がん3例、膵癌1例、甲状腺癌1例)。追跡調査期間中、肺がん二例、膵癌一例、大腸がん一例が死亡した。それぞれの骨関連有害事象は発生せず、疼痛、活動性,麻痺は維持されていた。 昨年までの結果で、骨転移症例では骨修復薬の投与によって全例で転移椎体の骨強度上昇が継時的に確認された。全例で麻痺予防が叶ったため、麻痺予防をendpointとした多変量解析は有益なデータとならなかった。そこで疼痛の改善(NRS3以下)をendopointとし、そのほかの交絡因子(年齢、性別、癌種、stage、抗がん剤使用の有無、放射線治療の有無、骨溶解像or骨硬化像)をすべて説明変数に設定しロジスティック回帰分析を行ったが、疼痛改善に寄与する要素は骨溶解像(OR 1.32, p=0.02)、癌種(肺がん OR=1.23, p=0.02)であった。そのほかの因子は優位性を示さなかった。またこれらの二項目はstepwiseでさらに解析しても優位性を失わなかった。次に癌骨転移症例の骨修復剤投与による疼痛改善予後予測を目的にROC解析を行ったが、上記交絡因子のうち骨溶解像でAUCは優位であった(p=0.01)。感度、特異度はそれぞれ0.76, 0.68であった。 これらの3年間の追跡調査の結果、骨修復剤による麻痺回避については全例で麻痺が回避できたことから優位な因子を示すことができなかった。一方、転移に由来する疼痛改善の効果については、肺がん、骨溶解像群で優位であった。
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