研究課題/領域番号 |
15K10424
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
八木 満 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (40338091)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 成人脊柱変形 / アライメント / 矯正固定術 / バイオメカニクス |
研究実績の概要 |
近位隣接椎間後弯変形・障害(PJK/PJF)は成人脊柱変形術後に高頻度に発生する合併症であるが、そのメカニズムに関して不明な点が多い。本研究では人体全身有限要素モデルアクティブTHUMS(Total HUman Model for Safety)を用いて、PJK/PJF発生のメカニズムを検討した。 方法 PJK発生のメカニズム検討のため、固定範囲、矢状面アライメント、及び筋活性の有無を条件とした。固定範囲:T1から仙骨まで固定、またはT9から仙骨まで固定のモデルを用いた。手術時に剥離される固定範囲内の靭帯と筋の要素を削除した。 T1固定では,頚板状筋,頚半棘筋,頭半棘筋,頚最長筋,頭最長筋,および,第7頚椎(C7)より下の横突間靭帯(ITL)を削除し, T9固定ではT8より下のITLを削除した。矢状面アライメント:立位姿勢のTHUMSにおいてT1傾斜:0度、20度の時と40度のモデルを用いた。筋活性度:脱力と伸筋活性20%(立位時の平均筋活性)を用いた。 立位姿勢のTHUMSの骨盤から足までの自由度を拘束し,重力を1秒間負荷した。脊椎を固定しないモデルをコントロールとして比較を行った。使用したTHUMSの要素数は234,910であった。 結果 UIV+1の尾側終板の圧縮力、椎体前面の最大応力は共にUIV がT1の場合には大きな力は生じないがT9 ではコントロールの4-20倍であった。UIVの頭側終板の圧縮力,椎体前面の最大応力は共にUIV がT1の場合には大きな力は生じないがT9 ではコントロールの1.5-6倍であった。棘上靭帯と棘間靭帯の引張力はいずれのUIVでもコントロールの2-50倍であったが、伸筋活性により低下した。一方、T1傾斜が40度の場合は0度と比較していずれのUIVでも伸筋活性による圧縮力の増加率が最大となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は成人脊柱変形の骨微細構造の解析と歩行解析、姿勢の解析を終了しこれらの結果を英文報告している。 平成28年度は研究計画を前倒しして脊柱変形関ジュ屋の術後の脊椎アライメントと歩行パターンの関連を解析し英文報告している。また、これらの骨微細構造のデータや姿勢制御時の筋緊張のデータから人体全身有限要素モデルアクティブTHUMS(Total HUman Model for Safety)を改変し、これを用いて近位隣接椎間後弯変形・障害(PJK/PJF)の活性メカニズムを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年にはこの人体全身有限要素モデルアクティブTHUMS(Total HUman Model for Safety)を用いて、近位隣接椎間後弯変形・障害(PJK/PJF)の予防法をシミュレーションし、もっとも近位隣接椎間後弯変形・障害(PJK/PJF)を減らし売る予防法を確立する。 具体的には近位隣接椎間へのポリエチレンテープを用いた固定や、他の素材とのハイブリッド型インプラントなどのシミュレーションを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初平成28年度に購入予定でした有限要素解析ソフトメカニカルファインダーの購入が必要なくなり、豊田自動車の持つ世界最高の人体全身有限要素モデルTHUMSを申請者らの取得した成人高齢者女性の筋活性のデータや骨微細構造のデータを追加して使用することで、当初の予定より精度の高い有限要素解析を既存ソフトを購入、解析することが可能となったため、それらの分を次年度に持ち越し、平成29年に使用する。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越し金を用いて、取得した有限要素データを全身有限要素モデルTHUMSに用いて、任意の方法で隣接椎間障害を予防するためのソフトウェアを購入し、また、得られた予防法(ポリエチレンテープ)を死体を用いたバイオメカニクス研究で確認し、これらの結果を国際学会で発表し、英文で報告し可能であれば、予防法の特許を取得する。
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