研究実績の概要 |
骨軟部肉腫領域での化学療法は、この20年間で特段の変化をみない。しかし肺転移が予後因子であるため、骨軟部肉腫の化学療法として、増殖と共に肺転移を抑制する新たな治療法の登場が望まれる。これまでに研究代表者らは、一部の扁平上皮癌等に発現する膜蛋白ポドプラニンは、血小板活性化受容体 CLECー2 に結合して血小板凝集を惹起して、血行性転移を促進することを発見した(J Biol Chem. 285: 24494ー507, 2010)。更に、ヒト骨肉腫細胞の高肺転移株ではポドプラニンが高発現し、また高肺転移株のみが血小板凝集を惹起することを見出した。本研究では、これらの成果を更に発展させ、肉腫ポドプラニンと血小板CLECー2を介した血小板活性化が肉腫の増殖・転移に果たす役割を解明し、それを治療へ発展させることが目的である。 平成28年度の計画と研究実績 血小板活性化による肉腫細胞の変化 1)浸潤能への影響;Boyden Chamberアッセイを用いる。上層には無血清条件で1.骨肉腫細胞のみ2.骨肉腫細胞と血小板の共培養3.血小板のみのとし、下層には10%FCS入りの基本培地を置く。その結果、骨肉腫細胞と血小板との共培養で最も高い浸潤能が認められた。 2)上皮間葉転換(EMT)への影響;プレートに骨肉腫細胞を播き、1日待機する。培地をFCSなしに変え、洗浄血小板を添加する。その結果、血小板と共培養した骨肉腫細胞では、Nカドヘリン、Snailなどの間葉系マーカーの発現が見られた。
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