研究課題/領域番号 |
15K10438
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小澤 英史 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (60635572)
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研究分担者 |
西田 佳弘 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50332698)
浦川 浩 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座講師 (60584753)
生田 国大 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (40732657)
濱田 俊介 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (90747289)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 腫瘍 / カテプシンK / 乳癌 / 癌骨転移 / 遠隔転移 / 細胞・組織 |
研究実績の概要 |
蛋白分解酵素である Cathepsin K(Ctsk)は破骨細胞から産生され、骨吸収に関与する。また、変形性関節症の進行において、軟骨細胞や滑膜細胞からの産生が確認されている。癌の進展にも関与する報告があり、特に乳癌や肺癌で骨病巣形成や拡大過程に果たす役割も解析されるようになってきた。Cathepsin K阻害剤が骨粗鬆症の治療薬として開発されつつあるが、癌においてもCathepsin Kを標的とした新規骨転移治療法の開発における基礎的データを蓄積することである。 Ctsk欠損マウスと野生型マウスを用い、肺癌細胞を右脛骨内に注射し骨転移モデルを作成した。両群での腫瘍の大きさと骨破壊の程度を評価した。骨転移部位の評価を軟X線にて右脛骨に溶骨性転移巣が形成されたことを確認し、1週間ごとに撮影し溶骨部の大きさを測定した。 ルイス肺癌細胞では骨破壊の進行が早く、2週間ほどで進んでしまうため評価時期の決定が難しく、個体間の差も評価しにくく差を調べることは難しかった。乳癌細胞では4週間で骨破壊は評価可能であった。 組織学的検討は還流固定後、パラフィン切片にてCtsk, RANKL, RANKなどの免疫染色、TRAPによる破骨細胞染色を行った。その後、光学顕微鏡を使用し細胞の局在や形態変化、細胞数や比率を解析し、TRAP陽性破骨細胞数や形態などを解析してきた。組織での骨破壊の程度をレントゲンによる骨破壊の面積と組織による面積で評価を試みたが、個体間の差をみることは難しかった。TRAP陽性細胞数は思いの他少なく、骨の部位により、骨幹端にはもともと多く、骨幹部は少ないため、腫瘍注射部位により左右された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は肺癌と乳癌細胞を使用して骨転移マウスモデルを作製し、破骨細胞や腫瘍細胞から産生されるCtskの役割を明らかにすることだった。8~10週齢の雌のCtsk欠損マウスと野生型マウスを供給することが、比較的困難な時期があった。脛骨内に注射し骨転移モデルを作ったが、肺癌細胞の成長が早く、ある程度骨破壊が進行し、骨内腫瘍周囲環境を観察するために最適な時期を設定し、モデルをつくることが困難であった。 腫瘍による骨破壊の進行が予想より早く、非常に破壊性で骨組織がほとんど残らないほど壊されるため、解析が非常に困難である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、乳癌細胞を中心にマウスに注射して骨破壊の程度とCathepsin Kとの関係を解析していく。組織亜型によっても発現が大きくことなることが予測される。また、おなじ乳癌組織内でもCathepsin Kを産生する細胞としていない細胞にわかれる。 Ctsk-/-マウスにて骨転移モデルを作製し、転移巣について観察した。CTK阻害剤による骨転移巣制御効果あるいは抗腫瘍効果の有無を今後調べる予定である。CTK阻害剤は骨破壊抑制効果ばかりか、骨腫瘍組織量が減少したという報告や、更に、CTK阻害剤は骨転移巣内で腫瘍成長因子を減少させる報告もされている。in vitroにおいてCTK阻害剤が癌細胞のinvasionを抑制したことが報告されている。Cathepsin Kが血小板を活性化し癌細胞との相互作用にて腫瘍進展に関与する因子の発現が増加している報告があり、今後これらのマーカーを組織内で染色して特徴をしらべ、腫瘍の予後や骨転移の程度などとの関係を調べていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
骨転移モデルを作製し評価するにあたり、腫瘍細胞ごとに骨破壊の進行が異なるため、それぞれに適切な時期を設定しなくてはならなかった。それにはレントゲンでは評価が難しく、解析が遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
・予定より多くのマウスを購入、骨評価の設定を次年度に行う。 ・研究結果の発表に関連する学会および論文校正費用、また研究に関連する書籍の購入費用に研究費を使用する。
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