研究課題/領域番号 |
15K10441
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
池口 良輔 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80437201)
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研究分担者 |
青山 朋樹 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90378886)
太田 壮一 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70592484)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 末梢神経 / 再生 / 細胞 / 線維芽細胞 / バイオ3Dプリンター |
研究実績の概要 |
外傷や悪性腫瘍による末梢神経損傷により神経欠損がおこれば、人としての生活は大きく制限される。欠損部が小範囲の場合は自家神経移植を用いての再建が一般的には行われているが、自家神経移植では採取可能な神経組織に限りがあるため広範な末梢神経欠損の再建は不可能で、この解決法として同種神経移植や人工神経という概念が生まれてきた。万能細胞と呼ばれる間葉系幹細胞には神経再生促進作用があり、現在では3D プリンタ-を用いた細胞性積層化技術により末梢神経のような三次元管腔組織を作成することが可能である。末梢神経欠損モデルを用い、細胞から作成した三次元管腔組織にて神経再生が促進されることを明らかにするのが今回の研究の目的である。 ヒト線維芽細胞を用いて96ウェルプレートに細胞を2~3×10^4cells/wellずつ播種しスフェロイド形成を確認後、バイオ3Dプリンターを用いて、内径2mm長さ8mmの三次元管腔組織を作成した。免疫不全ラットの坐骨神経を用い、作成した管腔組織にて5mm の神経欠損部を架橋した(n=5)。神経欠損部作成し架橋せずに放置したものをコントロール(n=5)とした。 術後8週で実験群では足部内転筋での活動電位が認められた。また動作解析でもコントロール群と比較し有意に下肢自動運動の回復が認められた。組織を観察してみると肉眼的に再生神経が認められた。切片を作成し電子顕微鏡像ではコントロール群では変性のみが認められるのに対して、実験群では再生軸索が遠位神経内に認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)ヒト線維芽細胞を用いて96ウェルプレートに細胞を2~3×10^4cells/wellずつ播種しスフェロイド形成を確認後、バイオ3Dプリンター「Regenova」(サイフューズ社)を用いて、内径2mm長さ8mmの三次元管腔組織を作成した。 (2)免疫不全ラットの坐骨神経を用い、上記作成したチューブにて5mm の神経欠損部を架橋した(n=5)。コントロールとして神経欠損部作成し架橋せずに放置したものを作成した(n=5)。 (3)術後8週の時点で動作解析と電気生理学的な評価を行った。動作解析では実験群はコントロール群と比較し有意に下肢自動運動の回復が認められた。電気生理学的評価では足部内転筋での活動電位が、コントロール群では認められなかったが、実験群では認められ、また、神経伝導速度も計測できた。坐骨神経を展開し、坐骨神経が架橋されていることを実験群では肉眼的に確認した。再生神経の組織を採取し、固定後、切片を作成し電子顕微鏡にて観察したところ、遠位神経内に実験群では再生軸索が確認でき、一方、コントロール群では変性した神経を確認した。再生軸索数、軸索直径、軸索密度の評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に行っていた実験の継続を行う。具体的には(1)間葉系幹細胞の分離培養の継続、(2)三次元管腔組織の作成の継続。(3)移植手術の継続、(4)神経再生評価の継続を行う。(5)移植細胞の分化の評価;移植した線維芽細胞が再生神経内のどの部位に分布しているかを、移植細胞に標識を行い、再生神経から採取した組織を固定後、免疫染色を行い評価する。(6)内径2mm長さ13mmの三次元管腔組織も作成し、より長い距離の神経再生の評価も追加する。 (6)研究分担者間での連絡と議論:1週間に1度、火曜日夕方2時間のMeetingを行って研究分担者間で連絡をとり、それまでのデータの検討、今後の実験について議論を行う。Meetingの中で議論し、n数を増やす、実験群のプロトコールを変更することをMeetingで決定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
三次元構造体の作成(熟成)方法について、従来のプロトコールと比較検証をおこなった。この大きな改善が得られることから、使用処理について改変を行ったため、予定時実験の遅延を必要とした。このため当初予定していた分担実験を繰り越し、来年度に実施することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
5月中に予備実験を終了して6月には本実験を実施予定である。
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