研究課題
系統的化学療法導入により原発性悪性骨軟部腫瘍(以後、肉腫)の予後は改善したが、遠隔転移や薬剤耐性例を来した進行例の予後は極めて不良である。腫瘍の転移や薬剤耐性化においては、腫瘍細胞とその周辺の腫瘍間質との相互作用が重要な役割を担っている。本研究では、肉腫周囲の腫瘍間質細胞の中で、特に骨髄間質細胞(Bone marrow stromal cells: BMSC)に焦点をあて、肉腫の悪性化におけるBMSCの役割を解明するとともに、BMSCを標的とした新規治療法の開発をめざす。本年度は、腫瘍細胞そのものに焦点をあて、高悪性度の軟部肉腫である、悪性末梢神経鞘腫瘍の新規治療に関して検討をすすめた。腫瘍の増大に伴い、腫瘍内部は低酸素環境となり、低酸素誘導因子Hypoxia Induced-factor 1(HIF-1)が誘導される。HIF-1の発現に伴い、血管内皮細胞増殖因子VEGFの誘導や、アポトーシス耐性が生じ、腫瘍の悪性化が進行する事が報告されているため、MPNSTにおけるHIF-1の役割について解析した。約400種類に薬剤ライブラリーをスクリーニングしたところ、HIF-1の阻害剤がMPNST細胞株に殺細胞効果を持つ事、siRNAによるHIF-1の発現阻害によりMPNST細胞株にアポトーシスが生じることを見いだした。また臨床的にもHIF-1の高発現がMPNSTの独立した予後不良因子であることも確認、HIF-1がMPNSTの治療標的、ならびに有効なバイオマーカーとなることを証明した。
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Plos One
巻: 12 ページ: e0178064
10.1371/journal.pone.0178064