研究実績の概要 |
骨軟部腫瘍における新たな治療戦略として、腫瘍内細胞外マトリックスを減少させる薬剤の探索を当初の目的として、骨軟部腫瘍のアンジオテンシン経路を解析した.SW982(滑膜肉腫)、SW1353(軟骨肉腫)、HT1080(線維肉腫)、HOS-MNNG(骨肉腫)細胞株において、Angiotensin-II刺激によりThrombospondin-1レベルの有意な上昇は認められなかった.siAGTR-1によりAGTR mRNAのノックダウンは確認したが、TSP-1レベルは有意な抑制を認めなかった.Angiotensin経路阻害薬であるlosartanを種々の濃度で骨軟部腫瘍細胞に処理後、細胞増殖には有意な変化を認めなかった.さらCollagen I, PAI-1, TGF-Bなどの細胞外マトリックスおよびその産生に関連する分子は増強/減弱等一定の効果を認めなかった.以上よりAngiotensin経路は骨軟部腫瘍の細胞外マトリックス、腫瘍増殖に影響を与えていないことが明らかとなった.そこで線維芽細胞の細胞外マトリックス産生を抑制することが報告されている抗アレルギー薬Tranilastに着目した.Tranilastは濃度依存性に骨肉腫細胞の増殖を抑制した.TranilastはCisplatinおよびDoxorubicinとの併用で増殖抑制効果を増強し、Conbination indexの解析ではCisplatinを相乗的に作用していた.In vivoでもCisplatinとの併用で骨肉腫移植モデルの腫瘍増殖を抑制した.TranilastはCisplatinのG2/M期誘導作用を増強し、骨肉腫のapoptosisを増強した.Tranilastはすでに臨床で多くの患者において使用され安全性も高く、がん治療への応用が期待できる.
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