研究課題/領域番号 |
15K10453
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
藤原 浩芳 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90381962)
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研究分担者 |
小田 良 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80516469)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 体内時計 / 骨折 / 発光イメージング / PTH / 創外固定器 |
研究実績の概要 |
マウス大腿骨骨折部の体内時計の観察を行った。時計遺伝子Per2に発光レポーターを導入した遺伝子改変マウスを用いた。Per2は体内時計を形成する時計遺伝子の1つであり、PER2タンパクとホタルルシフェラーゼ(Luc)の融合タンパクをつくる遺伝子改変マウス(Per2::Lucマウス)は、体内時計の状態を調べるために広く用いられている。このマウスを用いることで、発光が概日リズムを示し、体内時計の状態(時刻)を知ることが可能となる。Per2::Lucマウスの右大腿骨に骨切りを行い、われわれの設計した創外固定器を使用したマウス骨折モデルを作製した。術後継時的な単純X線と組織染色による評価で骨癒合が術後経過期間を経るに従って進行していたことから、本創外固定器を使用した骨折モデルが評価系として機能することが示された。術後14日目の骨折大腿骨を採取して器官培養下で発光を観察したところ、治癒過程の骨折部および成長軟骨板に、明瞭な約1日周期のリズム(概日リズム)が観られた。この結果から、我々がこれまでに示した成長軟骨板だけでなく、治癒過程にある骨折部にも体内時計が内在することが示された。さらに、骨折部の体内時計の副甲状腺ホルモン(PTH)による同調機構の解明に迫るために、PTH投与による位相変位(体内時計の刻む時刻の変化)を検討した。PTH投与により、大腿骨骨折部の体内時計は位相変位した。また、PTH受容体抗体を使用した免疫染色で、治癒過程の骨折部にPTH受容体の発現を確認した。今回の結果からPTHが骨折部の時刻の制御因子の一つである可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腿骨器官培養系を用いた継時的な発光イメージングにより、骨折部の体内時計の存在を明らかにした。さらに、骨折部における、PTHによる体内時計の同調機構の一端を明らかにすることができた。このことから、研究は概ね順調に進展していると考える。 具体的には、以下の通りである。創外固定器を設計し、簡便な手技によるマウス骨折モデル作製を可能とした。このモデルを使用することにより、器官培養系を用いた広範囲を視野にいれ発光を観察できる装置で、世界で初めて骨折部に内在する体内時計の観察に成功した。さらに、PTH投与により大腿骨骨折治癒部に見られた発光リズムがPTH投与によって位相変位した。このことは、PTHが骨折修復の効果を高めると考えられていることから、興味深い知見だと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度には、引き続き骨折部の体内時計の観察を行うとともに、生体での骨折修復の評価を試みる。また、骨折部体内時計の機能解析のために、Bmal1ノックアウトマウスを用いた解析を行いたい。Bmal1は時計遺伝子の1つで、ノックアウトマウス は概日リズムの破綻や成長障害が生じることが知られている。このマウスとPer2::Lucマウスを交配させることで、体内時計の観察を容易に行えるようにして、骨折モデルを作成し、発光顕微鏡を用いて骨折部の体内時計の観察を行う。骨折修復の評価としては、次のことを検討したい。術直後および1週おきに麻酔下に単純X線撮影を行い、生体での骨折修復を評価する。また、術後適切なタイミングで大腿骨を採取し、骨折修復についての組織学的な検討も行う。
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