研究課題/領域番号 |
15K10457
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
石井 賢 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (00276289)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 骨軟部組織 / 感染症 / インプラント関連感染 / メタボローム解析 |
研究実績の概要 |
超高齢社会の到来に伴い、退行変性疾患や外傷による人工関節置換術、脊椎矯正インプラント、人工骨などの生体材料を用いた手術が広く普及している。一方で、開放性骨軟部組織損傷やインプラント設置手術では、治療過程においてインプラント関連感染症を併発する頻度が少なくない。実際の臨床現場においては感染症の発症予防のために術中洗浄や抗生物質投与が実施されるが、これらが十分に奏功しない場合に感染症が成立する。本研究では、感染症予防を目的に発症早期の段階において超音波を用いた生体材料表面の細菌除去と感染症バイオマーカーの探索を実施した。 バクテリアル・ルシフェラーゼを発現する黄色ブドウ球菌(S.aureus)(1x108CFU/ml)中にチタン合金を留置し、37℃・24時間培養し金属表面にバイオフィルムを形成させた。続いてLIVE/DEAD(LD)蛍光染色にてバイオフィルムを染色後、①未処理、②乾燥、③生理食塩水洗浄、④高圧洗浄、⑤精製水洗浄、⑥セファメジン洗浄、⑦イソジン洗浄、⑧オキシドール洗浄の臨床現場で試みられている8つの処置に加え、⑨超音波照射をすべて3分間の処置を行った。一定の周波数と出力による超音波照射により金属表面のバイオフィルムの除去が達成できた。 われわれが過去に作製した再現性の高い定量的マウス骨髄炎モデル(Infect and Immunity, 2011)を用いて、①コントロール群、②手術(外傷)群、③手術(外傷)+細菌注入群の3群の手術後3日目の末梢血液から血漿を採取し、CE-TOFMSとLC-TOFMSを用いた代謝産物を解析した。上記の①と②と比較し、③で有意な高値あるいは低値を示した代謝産物を感染症バイオマーカーのターゲットとして探索した。現在のところマウスからの血液多量採取が必要であるため、多くのマーカーは同定できていないが、手術(外傷)+細菌注入群で血清スフィンゴシンが上昇していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では、①超音波照射のよる細菌ならびにバイオフィルム除去in vitro実験と②感染症バイオマーカー探索実験を2つの大きな課題としているが、1年目においてそれぞれである程度の結果を得ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
①では、超音波の出力と周波数の照射条件を詳細に検証し最も生体安全性が高く、より効果的な条件設定の検証を行う。また、処理前後のバイオフィルムは蛍光顕微鏡とSEMにて観察する。In vivoでも初年度同様に未処理と超音波処理(複数条件)後の金属を洗浄液とともに各々成体BALB/cマウスの浅殿筋に埋没し、感染症成立の有無を光イメージングで観察し、同様にSEMと病理組織による検討を行う。 ②では、初年度に引き続き、感染症バイオマーカー探索実験をマウス骨髄炎モデルを用いて実施する。同様に①コントロール群、②手術(外傷)群、③手術(外傷)+細菌注入群の3群の手術後3日目の末梢血液から血漿を採取し、CE-TOFMSとLC-TOFMSを用いた代謝産物を解析し、最も再現性の高い、バイオマーカー候補を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
メタボローム解析が外注のため、大きな支出となる。初年度は慎重に再現性の高い動物作成や血液最終などに時間を費やした。
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次年度使用額の使用計画 |
メタボローム解析を実施する予定。
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