研究課題
本研究では、感染症予防を目的に発症早期の段階において超音波を用いた生体材料表面の細菌除去と感染症バイオマーカーの探索を実施している。バクテリアル・ルシフェラーゼを発現する黄色ブドウ球菌(S.aureus)(1x108CFU/ml)中にチタン合金を留置し、37℃・24時間培養し金属表面にバイオフィルムを形成させた。続いてLIVE/DEAD(LD)蛍光染色にてバイオフィルムを染色後、①未処理、②乾燥、③生理食塩水洗浄、④高圧洗浄、⑤精製水洗浄、⑥セファメジン洗浄、⑦イソジン洗浄、⑧オキシドール洗浄の臨床現場で試みられている8つの処置に加え、⑨超音波照射をすべて3分間の処置を初年度行った。当該年度は、最も有効な照射条件を検討した。その結果、800kHz・3W/cm2が最も有効な照射条件であった。また、SEMと病理でも同様の所見を呈していた。また、われわれが過去に作製した再現性の高い定量的マウス骨髄炎モデル(Infect and Immunity, 2011)を用いて、①コントロール群、②手術(外傷)群、③手術(外傷)+細菌注入群の3群の手術後3日目の末梢血液から血漿を採取し、CE-TOFMSとLC-TOFMSを用いた代謝産物を解析した。上記の①と②と比較し、③で有意な高値あるいは低値を示した代謝産物を感染症バイオマーカーのターゲットとして探索した。手術(外傷)+細菌注入群で297の代謝産物が検出された。うちSham群とコントロール群で低値を、感染群で高値を示す骨感染症に特異的な血漿バイオマーカー候補は55物質同定された。多変量解析にて正の相関関係が特に強い物質はSpingosine(p<0.001)とSphinganine(p<0.001)であった。またTCAサイクル関連物質は感染群で有意に低く、特にリンゴ酸(p<0.001)が最も負の相関が強かった。
2: おおむね順調に進展している
本課題では、①超音波照射のよる細菌ならびにバイオフィルム除去in vitro実験と②感染症バイオマーカー探索実験を2つの大きな課題としているが、初年度においてそれぞれである程度の結果を得ることができ、当該年度ではさらに最適条件と統計学的に有意な差をもつ代謝産物が同定されている。
①では、In vivoにおいて同様に未処理と超音波処理(複数条件)後の金属を洗浄液とともに各々成体BALB/cマウスの浅殿筋に埋没し、感染症成立の有無を光イメージングで観察し、同様にSEMと病理組織による検討を行う。②では、いくつかの代謝産物を同定できたため、その再現性をか確認し、可能であれば、臨床サンプルでその再現性を確認したい。
メタボローム解析を予定していたが、年内に実施できなかった。
メタボローム解析を実施する予定。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
World Neurosurg
巻: 97 ページ: 757
10.1016/j.wneu.2016.10.018
Clin Spine Surg
巻: 00 ページ: 1-6
10.1097/BSD.0000000000000460