研究課題
骨軟部腫瘍は若年齢層に発症ピークを示し、高頻度に肺転移を生じ、初診時に肺転移が見られた患者の予後は総じて悪い。肺転移の抑制が患者予後の改善に決定的なポイントと考えられるが、現在までに転移を抑制する手立ては見出されていない。当該研究では滑膜肉腫を標的モデルとして、転移を主導する分子の同定とそれらの分子が調節する転移メカニズムの解明に焦点を絞っている。これまでに、滑膜肉腫細胞株Aska-SSとYamato-SSで、Twist1がYamato-SSにのみ強く発現し、Yamato-SS細胞表面にのみ樹状突起が見られ、Yamato-SSのほうが低酸素や浮遊培養により効率的に生存および転移に関わる因子の発現上昇が見られ、それらの少なくとも一部はTwist1により制御されていることが明らかになった。一方、細胞性の自然免疫応答で働くNK細胞は腫瘍化した細胞が提示するMICA/B分子等を認識し、腫瘍細胞に対して細胞傷害性を示すが、Twist1を発現するYamato-SSではMICA/Bが発現しておらず、Twist1の発現が見られないAska-SSではMICA/Bが強く発現していることを見出した。Aska-SSに対して、レンチウイルスによりTwist1を過剰発現させたところMICA/Bの発現を抑制した。このことからTwist1はMICA/Bの発現調節を介して自然免疫監視をエスケープさせていると推測される。本研究ではTwist1の発現は低酸素環境下や浮遊培養環境下で強化されることを見出しており、転移におけるTwist1の様々な機能は一貫して転移成立の方向に作用していると考えられる結果が蓄積している。Twist1の機能抑制が転移抑制への近道であると考え、今後はTwist1の発現制御および薬剤による発現抑制、演繹的に転移抑制の足掛かりを探索したい。
3: やや遅れている
研究自体は順調に進んでいるが、平成28年度に大阪府立成人病センター研究所から野崎徳洲会病院附属研究所へと研究拠点が移動し、野崎徳洲会病院附属研究所が実質的に平成28年10月から稼働し始めたため、約半年間のブランクが生じた。
本研究課題は、計画通りに推進するとともに今年度中に論文としてまとめ、投稿まで漕ぎ着けたいと考えている。
平成28年度に研究拠点が大阪府立成人病センター研究所から野崎徳洲会病院附属研究所へと移動した。野崎徳洲会病院附属研究所は28年度10月より稼働し始めたため、半年間の研究ブランク期間が生じた。
計上した予算はほとんどが消耗品関係である。予定通り消耗品関係の購入に当てる予定である。
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J Chemother.
巻: 28(5) ページ: 417-424
http://dx.doi.org/10.1080/1120009X.2015.1133013