研究課題/領域番号 |
15K10460
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 寛 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20407951)
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研究分担者 |
澤田 良子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30648308) [辞退]
矢野 文子 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (80529040)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | NF-κB シグナル / 変形性関節症 |
研究実績の概要 |
NF-κBシグナルは軟骨発生・分化を促進する反面、関節軟骨変性を促進する酵素を誘導するという、一見相反する多彩な作用を有することを明らかにしてきた。本研究では、関節軟骨におけるNF-κBシグナルの作用をin vivo, in vitroの両面から詳細に解析し、その全貌を明らかにするとともに、NF-κB関連の膨大なシグナルネットワークの蓄積を活用して新規創薬の標的分子を探索し、関節軟骨の変性予防・修復・再生の実現への道筋を切り開くことを目的としている。 今年度は、タモキシフェン誘導型軟骨特異的Cre作動マウス(Col2a1-CreERT)とRela floxマウスを交配し、ホモおよびヘテロノックアウトマウスを作成し、軟骨特異的、かつ時期特異的に対象遺伝子をノックアウトし、変形性関節症モデルを外科的に作成して解析を行った。その結果、ホモノックアウトマウスでは、軟骨の変性が進行しており、一方、ヘテロノックアウトマウスでは、軟骨基質分解酵素の抑制がみられた。いずれのマウスでも軟骨基質分解酵素の発現抑制がみられていた。一方、Relaの下流遺伝子として抗アポトーシス作用をもつ遺伝子は、ホモノックアウトマウスでは誘導されておらず、軟骨細胞のアポトーシスが亢進していた。これら下流遺伝子の発現調節は、Relaの発現量が少量でも抗アポトーシス因子が誘導されることが関係していると考えられた。 今後は、IKKノックアウトマウスを作成し、解析を進めるとともに、IKK阻害剤などNF-κBシグナルを抑制することで変形性関節症の治療が可能であるかを解析して行く予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タモキシフェン誘導型軟骨特異的Cre作動マウス(Col2a1-CreERT)とRela floxマウスを交配し、ホモおよびヘテロノックアウトマウスを作成し、軟骨特異的、かつ時期特異的に対象遺伝子をノックアウトし、変形性関節症モデルを外科的に作成して解析を行った。その結果、ホモノックアウトマウスでは、軟骨基質分解酵素の発現抑制が見られるのにも関わらず、軟骨の変性が進行していた。この原因としてホモノックアウトマウスでは軟骨のアポトーシスが亢進していることが明らかとなった。マイクロアレイの結果、Relaによって転写制御される抗アポトーシス作用を持つ遺伝子が明らかとなった。一方、ヘテロノックアウトマウスでは、軟骨基質分解酵素の抑制がみられ、さらに軟骨変性の進行が抑制されていた。ヘテロノックアウトマウスでは軟骨のアポトーシスの亢進は見られなかった。これら下流遺伝子の発現調節は、Relaの発現量が少量でも抗アポトーシス因子が誘導されることが関係していると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
Relaによる軟骨制御についてそのメカニズムが明らかとなったため、引き続きIKKノックアウトマウスを用いて解析を行う予定である。Relaと同様にタモキシフェン誘導型軟骨特異的Cre作動マウス(Col2a1-CreERT)とIKK floxマウスを交配し、ホモおよびヘテロノックアウトマウスを作成し、軟骨特異的、かつ時期特異的に対象遺伝子をノックアウトし、変形性関節症モデルを外科的に作成して解析を行う予定である。その際、Relaの下流遺伝子として同定された抗アポトーシス作用を持つ遺伝子の発現に着目する。また、IKK独自の作用の有無についても解析を進める予定である。また、IKK阻害剤などのNF-κBシグナルの阻害剤を用いて、膝関節注射などを行い、治療ターゲットとしての可能性を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
おおむね順調に研究が進んだために、必要以上の研究費の支出が発生しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
IKKノックトマウスを用いた遺伝子解析にかかる費用、交配用マウスなど。
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