研究実績の概要 |
我々は、これまでNF-κBシグナルは軟骨発生・分化を促進する反面、関節軟骨変性を促進する酵素を誘導するという、一見相反する多彩な作用を有することを明らかにしてきた。本研究では、関節軟骨におけるNF-κBシグナルの作用をin vivo, in vitroの両面から詳細に解析し、その全貌を明らかにするとともに、NF-κB関連の膨大なシグナルネットワークの蓄積を活用して新規創薬の標的分子を探索し、関節軟骨の変性予防・修復・再生の実現への道筋を切り開くことを目的としている。 昨年度まで、マウス変形性ひざ関節症モデルで、Rela floxホモノックアウトマウスでは、軟骨の変性が進行していたが、ヘテロノックアウトマウスでは、軟骨基質分解酵素の抑制がみられ、軟骨変性が抑制されていた。 そのため、NF-kBシグナルの適度な抑制により変形性関節症の信仰を抑制しうるという仮定のもと、IKK阻害剤などNF-κBシグナルを抑制剤の関節内注射モデルによる解析を行った。マウス変形性ひざ関節症モデルにおいて、関節不安定性惹起後に関節注射を行い、継時的にマウスひざ関節を組織学的に評価した。この際、IKK阻害剤の至適濃度を明らかにするために様々な濃度で解析を行った。その結果、濃度依存性に変形性関節症の進行が抑制できる傾向にあった。一方、高濃度では変形性関節症の進行が促進していた。これらの結果から、IKK阻害剤による適度なNF-kBシグナルの抑制によって、変形性関節症の進行を抑制しうることが明らかとなった。
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