研究課題
今年度は関節軟骨で時期特異的にHes1をノックアウトできるマウス(Col2a1-CreERt2;Hes1-flox)を用いて、変形性関節症モデルの解析を行った。変形性関節症モデルは8 週齢雄のマウスの内側側副靱帯の切離と内側半月板の切除を施行するもので、ヒトと同様に脛骨内側中央部の関節軟骨荷重部に軟骨変性が経時的に発症・進展することが分かっている。H&E 染色やSafranin O 染色に加え、Ⅱ型コラーゲンやAggrecanなどの軟骨基質因子やⅩ型コラーゲン、並びにMMP3、MMP9、MMP13、ADAMTS5、VEGFなどの軟骨変性、炎症マーカーなどの免疫組織染色を行う。変性の程度に関してはOsteoarthritis Research Society International (OARSI) のスコアリングが存在し(Osteoarthritis and Cartilage 18 (2010))、それを用いてコントロール群との差をスコアで検討した。OA発症早期と晩期でのNotchシグナルの役割が異なることが示唆され、現在、タイムコースで詳細に解析している。In vitroではHes1の下流の標的遺伝子の探索のために、Hes1の強制発現系のアデノウイルスまたは、Creアデノウイルス(Hes1-flox遺伝子を持つ細胞ではCreウイルス感染でHes1の発現がノックアウトされる)をHes1-floxマウスの関節軟骨細胞に感染曝露し、それぞれTotal RNAを回収後、cDNAマイクロアレイを行い、遺伝子発現プロファイルを取得するための予備的検証を行った。マイクロアレイのデータが得られたら、統合的に解析し、Hes1の転写標的遺伝子を解明する。さらに変形性関節症への関与が疑わしいものについては、発現ベクターやsiRNAを準備して機能解析に備える予定である。
2: おおむね順調に進展している
マウスを用いた実験に関しては、すでにマウスの交配がすすすんでいたため、すぐにモデルの作成と解析に取り組むことができた。アデノウイルスなどのベクターに関してもこれまで研究室で既に確立している解析ツールであったので、順調に解析をすすめることができている。
マイクロアレイのデータが得られたら、統合的に解析し、Hes1の転写標的遺伝子を解明する。さらに変形性関節症への関与が疑わしいものについては、発現ベクターやsiRNAを準備して機能解析に備える予定である。この解析によって、関節軟骨におけるHes1/Notchシグナルの作用の全貌解明ができると予想される。
おおむね研究が順調に進んだため、必要以上の支出を抑えることができた。
Hes1の転写標的遺伝子の解析、機能解析にかかる費用
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 2件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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