研究実績の概要 |
CCAAT/エンハンサー結合タンパク質(C/EBP)は共通のロイシンジッパー構造を持つ6種類のファミリー分子からなる転写因子群であり、各々が様々な細胞において、炎症、増殖、代謝など幅広い機能制御を担っている。申請者らは過去に、軟骨細胞でドミナントに働くC/EBPβの変形性関節症の促進作用について報告したが、その後、他のC/EBPファミリー分子が関節軟骨に発現し、多様な作用を有することが分かったため、その全貌を解明すべく本研究を実施している。 C/EBPファミリー分子のうち、転写活性化ドメインを有するCebpa, Cebpb, Cebpd, Cebpeの4つについて発現を調べたところ、マウス関節軟骨ではCebpb、Cebpdの発現が豊富であり、Cebpaは1桁ほど発現量が低く、Cebpeの発現量はほとんどなかった。ヒト関節軟骨細胞でもほぼ同様の傾向であることが分かった。次にこれらの機能を解析すべく、Cebpa, Cebpb, Cebpdを軟骨細胞株に強制発現させたところ、軟骨基質2型コラーゲンの分解酵素matrix metallopeptidase 13(MMP13)や、肥大軟骨細胞の特異的マーカー10型コラーゲン(COL10A1)が誘導される一方、2型コラーゲンやアグリカン、転写因子SOX9といった軟骨の維持に必須の分子の発現が低下した。またこの3分子の強制発現によって、細胞株の増殖の速度が低下することも分かった。C/EBP共通のドミナントネガティブフォームであるA-CEBPを作成し、同様に強制発現したところ、これらと反対に軟骨細胞の同化を促進し、変性を抑制することが分かった。現在はCre存在下にA-CEBPを発現するトランスジェニックマウスを作成し、生体レベルでの検証を行っている。
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