研究課題/領域番号 |
15K10463
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
片野 尚子 東京医科歯科大学, 再生医療研究センター, 助教 (50376620)
|
研究分担者 |
関矢 一郎 東京医科歯科大学, 再生医療研究センター, 教授 (10345291)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 再生医学 |
研究実績の概要 |
本研究では、関節内組織損傷軽症例に対する薬剤の開発を目指した膝関節内を模倣する浮遊滑膜幹細胞遊走モデルを開発し、関節内投与により滑膜から幹細胞を動員する低分子化合物のスクリーニングを行う。 本年度は、浮遊滑膜幹細胞遊走モデルの作成、ならびに線維性滑膜と脂肪性滑膜のどちらが主要な細胞源であるかの検討を行った。本学倫理委員会の承認後、人工膝関節置換術を施行する患者の同意を得て、廃棄される滑膜組織を使用した。はじめに、浮遊滑膜産生細胞培養モデルの作成として、滅菌ボトル内に培養用ディッシュを置き培養液で満たし約1gの滑膜をディッシュに接触しないように浮遊させ、7日間培養器内で維持しディッシュ内の細胞を解析した。次いで、2種の滑膜の比較として、膝蓋上嚢滑膜(線維性滑膜)と膝蓋下脂肪体(脂肪性滑膜)を浮遊させ、7日後比較した。 その結果、20数例のほぼすべての滑膜から、ディッシュ上には、紡錘形の細胞から構成される多数のコロニーを認めた。このコロニー形成細胞はCD44(+)73(+)90(+)105(+)34(-)45(-)であり、軟骨・骨・脂肪分化能を有していることを確認した。また、滑膜約1gから得られたコロニー数は、線線維性滑膜のコロニー形成数が高かった。上記モデルにより、滑膜から関節液中に間葉系幹細胞が直接動員されることを初めて示すことできた。また、関節液中に動員する間葉系幹細胞の主要な源は線維性滑膜であることが推察できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた実験計画通りにおおむね進展している。使用する組織の特性に関する結果は、今後の低分子化合物スクリーニング結果の信頼性を高めるために、非常に重要なデータであり、得られている結果も予想していた結果に近く、今後も計画通りに進めていく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
ハイスループットな低分子加工物スクリーニングシステムの作成にあたっては、使用する組織のバラツキが大きく影響することが予想されたため、スケールダウンする前の遊走モデルにおいて、組織の均一性や再現性を向上させる手法も検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、浮遊滑膜幹細胞遊走モデルの作成後、スケールダウンの試作を行う予定で資材の購入費用を多く確保していたが、ハイスループットな低分子加工物スクリーニングシステムの作成にあたっては、使用する組織のバラツキが大きく影響することが予想されたため、最初の遊走モデルにおいて、どのような組織が当該実験系に適しているかの検討が必要であると考え、線維性滑膜と脂肪性滑膜のどちらが主要な細胞源であるかの検討を行ったため、試作品製作の費用が余剰となったから。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度は、ハイスループットスクリーニングに向けて、十分な組織・材料の検討を行った後に、スケールダウンを開始する。この検討により、最も時間と経費のかかるハイスループットスクリーニング工程の失敗を減らし、全体での経費と時間の節約を図る。
|