研究課題/領域番号 |
15K10470
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
冨田 哲也 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座准教授 (30283766)
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研究分担者 |
中神 啓徳 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座教授 (20325369)
二井 数馬 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30588380)
吉川 秀樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 理事・副学長 (60191558)
郡山 弘 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座助教 (60710093)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | arthritis / IL-17A抗体 / DNAワクチン |
研究実績の概要 |
1)関節リウマチを標的疾患としたIL-17Aワクチン療法の開発 IL-17AエピトープDNAワクチンをDBA/1Jマウスに2週間隔で3回投与した後、II型コラーゲンを投与して関節炎を惹起させ、関節炎スコアの上昇程度をワクチン無投与群と比較した。その結果、IL-17Aワクチン群で抗IL-17A抗体の産生と、有意な関節炎スコアの抑制が認められた。DBA/1Jマウスに抗II型コラーゲンモノクローナル抗体カクテルおよびLPSを投与することにより関節炎を惹起する、より重症度の高いモデルでも同様の実験を行った。その結果、IL-17Aワクチン予防投与群で、有意な関節炎スコアの抑制が認められた。この抑制効果は抗マウスIL-17A中和抗体の治療投与群よりも有意に優れていた。またワクチン群、対照ワクチン群、抗コラーゲン抗体投与(-)群の関節破壊の程度をマイクロCTを用いて確認した。その結果、ワクチン群で関節破壊の抑制が観察された。これらの結果から本ワクチンは関節リウマチに対して治療効果が期待できると考えられた。現在は疾患モデルマウスの関節炎の組織学的評価や、IL-17Aワクチン療法の最適化の検討などを進めている。
2)ヒト関節リウマチ培養滑膜への治療効果の検討およびヒト関節軟骨滑膜器官培養モデルでの検討 本ワクチンのエピトープ配列はヒトとマウスで2アミノ酸だけが異なっている。このヒトとマウスのエピトープには交差反応性があることを確認しているが、ヒト培養細胞を用いる実験にはヒトエピトープのワクチンを用いることとした。そこでヒトエピトープのIL-17AワクチンをBalb/cマウスに2週間隔で3回投与し、経時的に血清を回収した。ELISAで抗体価を確認し、in vitro実験に必要な抗IL-17Aヒトエピトープ抗血清を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IL-17AエピトープDNAワクチンのマウス関節炎モデルにおける有効性を示すデータが得られ、本ワクチンの関節リウマチに対する有効性がin vivoにおいて示された。また28年度の計画であるIL-17Aワクチンの最適化にも着手しており、in vitroの評価もヒトIL-17Aエピトープワクチンを投与した抗血清の取得など研究が進行中である。以上よりおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
IL-17Aエピトープ DNAワクチンの関節リウマチモデルにおける有効性を確認した。このワクチンを臨床応用するためには、より高効率に高い抗体産生が持続する投与方法などの最適化も重要である。そこで抗コラーゲン抗体カクテル誘導関節炎モデルを用いて、ワクチンの投与間隔等の最適化や、治療効果の増強に関与する因子の解析を引き続き行っていく。 またこのワクチンにおいて産生された抗IL-17A抗体が関節破壊や軟骨破壊の抑制に寄与するメカニズムの詳細については未だ不明な点が多い。そこでワクチン療法の最適化と並行して、細胞培養・器官培養を用いたin vitroの評価系で解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の検討で関節リウマチモデルでの有効性はある程度確認できたと考えている。最近脊椎関節炎の病態解明が進み脊椎関節炎の代表的疾患である強直性脊椎炎では関節リウマチより病態形成にIL-23/17の影響が強く関与していることが示唆されている。今年度は報告した通り関節リウマチモデル及び滑膜細胞を用いたin vitroの実験での解析検討に時間を要したため、H28年度に本モデルを用いた検討を行う予定で研究費を繰越した。
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次年度使用額の使用計画 |
脊椎関節炎モデルを作成するための動物(ラット、マウス)の購入に充てる予定である。
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