研究実績の概要 |
我々は大腿骨頭壊死症の患者に対し自家骨髄単核球移植を行い良好な圧潰予防効果を得てきたが、未だ長期の治療期間を要し、広範囲壊死例でその効果は不安定である。本研究では移植細胞の骨修復能を向上させる目的に、miRNAを骨髄単核球に導入することによる移植細胞としての質の向上、効果的なサイトカインやmiRNAなどを分泌するキャリアとして周辺組織の再生環境を整える効果があると仮説を立てた。 miRNA導入骨髄単核球による骨修復の促進効果の基礎データ取得のため、ステロイド関連骨壊死患者および非大腿骨頭壊死症患者(変形性股関節症)から採取した骨髄液よりmiRNAを精製し、網羅的発現解析により大腿骨頭壊死症で高発現しているmiRNAとして、miR-31, miR-34a, miR-146, miR-210, miR-218が同定された。また、研究機関中に目的合成miRNAの細胞への過剰導入が、細胞および培養上清中におけるmiRNA量を導入濃度依存的に増加させること、遊走能を抑制することが知られているmiRNAを細胞より分泌させた培養上清は他種細胞への添加により容易に細胞に取り込まれ、遊走能を制御できることを示した。 今回同定されたmiRNAを導入した移植細胞の骨形成能を評価するために、骨分化誘導培地を用いて各miRNA導入細胞を培養し、骨形成マーカーの発現を評価した。いずれのmiRNAもcollagen type 1A1の高発現が確認され、miR-31, miR-146, miR-210, miR-218ではRunx 2の高発現も確認されたが、osteocalcinの発現にはばらつきを認めた。またin vivoでの骨形成評価のために、各miRNAをラット偽関節モデルの偽関節部に注入し、micro CTを用いたX線学的評価により、いずれのmiRNAとも骨形成能を促進させることが示唆された。
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