高コレステロール血症治療薬のスタチンには、変形性膝関節症における軟骨変性抑制効果があることが、過去の研究で知られている。しかし、先行研究において、組織学的な有効性を得るためには、週1回の関節内連続投与が必要であった。本研究では、その臨床な有用性の向上を目指して、スタチン製剤の除放効果を得るためにPLGAによるマイクロスフィアにスタチン製剤を封じ込め、変形性膝関節症動物モデルを用いた有効性検証を行った。 まず、臨床で使用されている各種スタチン製剤の中から、変形性関節症の軟骨細胞に対する薬理効果を比較検討した。変形性膝関節症患者から採取した軟骨組織より軟骨細胞を単離し、培養を行い、各種スタチン製剤を添加して、軟骨基質産生と異化蛋白発現抑制を検討した。その結果、フルバスタチンが最も効果が高いことが判明した。 次にフルバスタチンをPLGAマイクロスフィアに封入し、in vitroでの除放効果を確認した。PBS内で約2週間放出が持続することが確認できた。 ウサギのACL切離モデルを用いて、フルバスタチン封入PLGAマイクロスフィアを関節内に単回投与を行い、その5週間後に組織学的検討を行い、薬剤を封入していないPLGAマイクロスフィアを投与した群と比較した。フルバスタチン封入PLGAマイクロスフィアを注入した群は、有意に変形性関節症の組織学的スコア(OARSIスコア)が低く、軟骨変性が抑制されていた。除放効果があるDDSを用いてスタチンを単回投与することで、変形性関節症の進行抑制が認められたことから、臨床応用につながる結果をえることができた。
|